業務リスクをAIで洗い出すプロンプトテンプレート 企画・会議・運用前の抜け漏れを表で整理する
新しい企画を進める前、会議で決まった施策を実行する前、または社内ルールを変える前に使うプロンプトです。ChatGPT、Claude、Gemini などの汎用LLMに、業務上のリスクを「何が起きるか」「誰に影響するか」「先に何を確認するか」まで整理させることを狙います。
ポイントは、AIにいきなり「リスクを教えて」と聞かないことです。対象業務、関係者、前提条件、出力形式を先に渡すと、確認すべき観点が実務で使いやすい形に近づきます。
- 使う場面: 企画、業務改善、会議後の実行計画、外部委託、システム変更、採用施策など
- 向いている人: リスク管理の専門家ではないが、事前確認の抜け漏れを減らしたい人
- 出力形式: 優先度つきの表、確認質問、次に取るべき対応案
- 注意点: AIの出力は最終判断ではなく、社内規程・法務・情報システム・現場担当者の確認材料として使う
ここがポイント: リスク洗い出しプロンプトでは、「リスク名」だけでなく「起きる条件」「影響を受ける人」「確認すべき証拠」まで出させると、次の行動に移しやすくなります。
このプロンプトで作れるもの
このテンプレートは、業務の開始前にリスク候補を表で整理するためのものです。
たとえば、次のような場面で使えます。
- 新しいキャンペーンを始める前に、顧客対応や炎上リスクを確認する
- 社内ツールを変更する前に、移行漏れや権限設定の問題を洗い出す
- 外部パートナーに作業を依頼する前に、情報共有や納期遅延のリスクを整理する
- 採用面接フローを変える前に、候補者体験や評価のばらつきを確認する
- 会議で決まった施策について、実行前に見落としを探す
完成イメージは、リスク一覧と確認質問のセットです。表だけで終わらせず、担当者が次に聞くべき質問まで出すことで、会議メモや実行計画に貼り付けやすくなります。
コピペ用プロンプトテンプレート
まずは、このまま貼り付けて使えます。{} の中だけ、自分の案件に合わせて書き換えてください。
あなたは業務リスクの洗い出しを支援するアシスタントです。
以下の業務・企画について、実行前に確認すべきリスクを整理してください。
# 対象
- 業務・企画名: {例: 新しい問い合わせ対応フローの導入}
- 目的: {何を改善・実現したいか}
- 実施予定時期: {例: 2026年8月から}
- 関係者: {例: カスタマーサポート、営業、情報システム、外部委託先}
- 対象者・利用者: {例: 既存顧客、社内メンバー、応募者}
- 現在わかっている前提: {決まっていること、制約、使うツール、予算、期限など}
- まだ未確定の点: {未定の条件、判断待ちの事項}
# 出力してほしい内容
次の形式で整理してください。
1. リスク一覧
- リスク名
- 起きるきっかけ
- 影響を受ける人・部署
- 起きた場合の影響
- 発生しやすさ(高・中・低)
- 影響度(高・中・低)
- 優先度(高・中・低)
- 事前に確認すること
- 予防策または軽減策
2. 担当者に確認すべき質問
- 現場担当者に聞く質問
- 管理者に聞く質問
- 法務・情報システムなど専門部署に確認する質問
3. すぐに決めるべきこと
- 実行前に決めるべき項目
- 後回しにしてよい項目
- 判断に必要な追加情報
# 条件
- 推測で断定しないでください。
- 不明点は「確認が必要」と明記してください。
- 個人情報、契約、セキュリティ、運用負荷、顧客対応、スケジュールの観点を必ず含めてください。
- 最後に「人間が最終確認すべきポイント」を5つ以内でまとめてください。
このテンプレートの狙いは、リスクを「怖そうな項目」として並べることではありません。実行前に誰へ何を確認すればよいかを見える形にすることです。
入力時に変える部分と固定したい部分
リスク洗い出しでは、入力情報の粗さがそのまま出力の粗さになります。特に変えるべき部分と、固定した方がよい条件を分けておくと安定します。
毎回変える部分
次の項目は、案件ごとに具体的に書き換えます。
{業務・企画名}: 何についてリスクを見たいのかを一文で書く{目的}: コスト削減、品質改善、売上増、工数削減など、狙いを明確にする{関係者}: 部署名、外部委託先、承認者、実作業者を入れる{対象者・利用者}: 顧客、応募者、社内メンバー、取引先などを分ける{現在わかっている前提}: 使うツール、期限、予算、対象範囲を入れる{まだ未確定の点}: AIに推測させず、未定として扱わせる
「関係者」を入れる理由は、リスクの影響先が変わるからです。同じ業務変更でも、顧客が触れる変更なら問い合わせや説明責任が増えます。社内だけの変更なら、教育、権限、移行作業の方が重要になります。
固定した方がよい条件
一方で、毎回入れておくと安定する条件もあります。
- 不明点は断定せず、「確認が必要」と書かせる
- 発生しやすさ、影響度、優先度を分ける
- 予防策だけでなく、確認質問も出させる
- 個人情報、契約、セキュリティ、運用負荷を必ず見る
- 最後に人間が確認するポイントを残す
AIは自然な文章を作るのが得意ですが、社内事情や契約条件を勝手に知っているわけではありません。だからこそ、未確定のものを未確定として扱わせる指示が重要です。
NG例と改善例
リスク洗い出しで失敗しやすいのは、指示が短すぎるケースです。短い指示でも答えは返ってきますが、担当者が動ける粒度になりにくくなります。
NG例
新しい問い合わせ対応フローのリスクを洗い出してください。
この指示では、AIは一般論を返しやすくなります。顧客向けなのか、社内運用なのか、外部委託があるのか、個人情報を扱うのかがわかりません。
結果として、次のような出力になりがちです。
- 情報共有不足
- 対応遅延
- 顧客満足度低下
- 担当者の負担増
項目としては間違っていなくても、これだけでは会議で次の確認に進みにくいです。
改善例
新しい問い合わせ対応フローを2026年8月から導入予定です。
対象は既存顧客からのメール問い合わせで、一次対応を外部委託先に依頼します。
社内ではカスタマーサポート、営業、情報システムが関係します。
個人情報を含む問い合わせがあり、対応履歴は既存CRMに登録します。
この前提で、実行前に確認すべきリスクを表で整理してください。
各リスクについて、起きるきっかけ、影響を受ける人、影響度、発生しやすさ、事前確認事項、予防策を出してください。
不明点は断定せず、確認質問として分けてください。
改善した点は、次の3つです。
- 誰が関係するかを書いた
- どんな情報を扱うかを書いた
- 出力形式と不明点の扱いを指定した
この違いだけで、AIの出力は「一般的な注意点」から「実行前の確認リスト」に近づきます。
出力を安定させるコツ
リスク洗い出しでは、AIに自由に考えさせすぎると、項目の粒度がばらつきます。表の列、評価基準、確認手順を先に決めておくと使いやすくなります。
表の列を先に指定する
「表で出して」とだけ書くと、モデルによって列が変わります。業務で使うなら、列名まで指定した方が安定します。
出力は次の列を持つ表にしてください。
- No.
- リスク分類
- リスク内容
- 起きるきっかけ
- 影響を受ける人・部署
- 影響度(高・中・低)
- 発生しやすさ(高・中・低)
- 優先度(高・中・低)
- 事前確認事項
- 予防策
- 残る不確実性
「残る不確実性」を入れると、AIが判断できない部分を隠しにくくなります。ここが空欄だらけになる場合は、入力情報が足りないサインです。
評価基準を短く決める
優先度を出させる場合は、基準も渡します。
優先度は次の基準で付けてください。
- 高: 実施前に必ず確認しないと、顧客・法務・セキュリティ・売上・納期に大きな影響が出る可能性がある
- 中: 実施後に問題化する可能性があり、担当者や運用ルールを決めておく必要がある
- 低: 影響は限定的だが、余裕があれば確認したい
基準がないと、AIはもっともらしい優先度を付けます。ただ、その「高・中・低」が自社の判断基準と合っているとは限りません。
最後に確認質問を出させる
リスク一覧だけでは、次の会議で何を聞けばよいかが曖昧になります。最後に質問リストを出させると、実務に移しやすくなります。
最後に、次の相手別に確認質問を出してください。
- 現場担当者に聞くこと
- 管理者に聞くこと
- 情報システムに聞くこと
- 法務・契約担当に聞くこと
- 外部委託先に聞くこと
相手別に分ける理由は、質問の持ち先を決めるためです。すべてを「確認事項」として並べるより、誰に聞くかが見える方が、会議後の行動につながります。
業務カテゴリ別の使い分け
同じリスク洗い出しでも、業務カテゴリによって重点が変わります。以下のように、テンプレートの一部を差し替えると使いやすくなります。
企画・キャンペーン
企画では、顧客への見え方、社内調整、スケジュールの遅れが重要になります。
この企画について、顧客対応、表示内容、社内承認、問い合わせ増加、スケジュール遅延の観点を重視してリスクを洗い出してください。
期待できる出力は、告知前に確認すべき表現、問い合わせ対応の準備、関係部署との役割分担です。
会議後の実行計画
会議で決まったことは、担当者、期限、未決事項が曖昧なまま残ることがあります。
以下の会議メモをもとに、実行前にリスクになりそうな未決事項、担当者の曖昧さ、期限の衝突、関係部署への確認漏れを整理してください。
この使い方では、リスクそのものよりも「決めたつもりになっていること」を見つけるのが目的です。
採用・人事
採用や人事では、候補者対応、評価基準、個人情報、社内説明が重要です。
この採用施策について、候補者体験、評価基準のばらつき、個人情報の扱い、面接官の負荷、社内説明の観点でリスクを整理してください。
AIの出力は、面接フローの確認や、評価項目の見直しの材料になります。ただし、個人情報や労務に関わる判断は、必ず社内の責任者や専門部署で確認します。
開発・システム変更
開発やシステム変更では、仕様の取り違え、データ移行、権限、障害時対応が中心になります。
このシステム変更について、データ移行、権限設定、既存業務への影響、障害時の戻し方、利用者への案内の観点でリスクを整理してください。
開発チームだけでなく、利用部門やサポート部門も影響を受けます。リスク表には、技術的な問題だけでなく、利用者への案内不足も含めると実務に合います。
法務・契約まわり
法務や契約に関わる内容では、AIに結論を出させるのではなく、確認観点を整理させる使い方に寄せます。
この取引・業務委託について、契約範囲、責任分担、納期、成果物の扱い、秘密情報、個人情報、再委託の観点で、法務担当に確認すべきリスクと質問を整理してください。
ここでは、AIの回答を契約判断として扱わないことが大切です。確認質問を作り、専門担当者に渡す前の整理に使います。
機密情報や個人情報を入れないための書き方
業務リスクの洗い出しでは、実案件の情報を入れたくなります。ただし、社外サービスに入力してよい情報かどうかは、利用しているツールの設定や社内ルールで変わります。
OpenAI、Anthropic、Google などの各社はプロンプト設計や安全な利用に関する公式ドキュメントを公開していますが、実務ではそれに加えて自社の情報管理ルールを優先して確認する必要があります。
入力を安全側に寄せるなら、次のように置き換えます。
- 実名の顧客名 →
大口顧客A - 個人名 →
担当者A、候補者B - 具体的な契約金額 →
高額な年間契約 - 未公開の製品名 →
新サービスX - メール本文全文 → 要点だけを抜き出した概要
プロンプトにも、次の一文を入れておくと扱いやすくなります。
入力情報には一部ぼかした表現があります。固有名詞や金額を推測せず、与えられた範囲でリスクと確認質問を整理してください。
重要なのは、AIに隠した情報を推測させないことです。ぼかした情報は、ぼかしたまま扱わせます。
仕上げのチェックリスト
最後に、出力結果をそのまま使う前に確認します。AIの表は見た目が整っていても、現場に合っていないことがあります。
- リスクが一般論だけになっていないか
- 影響を受ける人・部署が具体的に書かれているか
- 「確認が必要」とすべき点を断定していないか
- 個人情報、契約、セキュリティ、運用負荷、顧客対応が抜けていないか
- 優先度の高い項目に、次の担当者と確認方法を付けられるか
- 社内規程や専門部署の確認が必要な項目を見落としていないか
リスク洗い出しプロンプトは、正解を一発で出すためのものではありません。最初の出力を見て、足りない関係者、未確定の条件、確認先を追加しながら、会議やレビューで使える形に近づける道具です。
次に見るべきなのは、AIが挙げたリスクの多さではなく、高優先度の項目について、誰がいつ確認するかまで決められるかです。そこまで落とし込めれば、リスク一覧は単なる表ではなく、実行前のチェックリストとして使えます。
