チャットボット会話シナリオをAIで作るプロンプトテンプレート 問い合わせ対応・予約受付・社内FAQまで使える書き方
チャットボットの会話シナリオをAIで作るなら、最初に決めるべきことは「どの質問に答えるか」ではなく、ユーザーをどの状態まで案内するかです。
問い合わせ対応なら解決または有人対応へつなぐ。予約受付なら必要情報をそろえる。社内FAQなら社員が次に取る手順を迷わない形にする。ここを曖昧にしたままAIに頼むと、自然な会話文は出ても、実際の運用では使いにくい台本になります。
この記事では、ChatGPT、Claude、Gemini などの汎用LLMで使える、チャットボット会話シナリオ作成用のプロンプトテンプレートを紹介します。カスタマーサポート、予約受付、社内問い合わせ、資料請求などの業務チャットを作りたい人向けです。
- 作れるもの: チャットボットの会話フロー、分岐、返答文、エスカレーション条件
- 向いている用途: 問い合わせ対応、予約受付、社内FAQ、フォーム入力補助
- 出力形式: 表、箇条書き、JSON風の設計メモ
- 注意点: 個人情報、機密情報、法務・医療・金融判断は必ず人が確認する
用途と完成イメージ
このテンプレートは、会話文だけでなく「どの条件で、どの返答に進むか」まで整理するためのものです。
チャットボットは、きれいな文章だけでは動きません。ユーザーの発言に応じて、確認する項目、返す文面、次の分岐、対応できない場合の逃がし先が必要です。
たとえば問い合わせ対応なら、完成イメージは次のようになります。
- 初回メッセージ: 何を手伝えるかを短く示す
- ヒアリング: 注文番号、利用状況、困っている内容などを順に聞く
- 分岐: よくある質問で解決するか、担当者へつなぐかを判断する
- 返答文: ユーザーにそのまま表示できる自然な文面にする
- 終了条件: 解決、保留、有人対応、再問い合わせ案内を分ける
ここがポイント: 会話シナリオ作成では、「親切な返答」より先に「ゴール」「聞く順番」「対応できない条件」を指定すると、実務で直しやすい出力になります。
コピペ用プロンプトテンプレート
まずは、そのまま貼り付けて使える基本形です。{} の中を自社の用途に合わせて変更してください。
あなたは業務用チャットボットの会話設計担当です。
以下の条件に沿って、チャットボットの会話シナリオを作成してください。
# 目的
{チャットボットの目的}
例: ECサイトの配送状況問い合わせに対応する
# 想定ユーザー
{利用者の種類}
例: 商品を購入済みの一般顧客
# 対応範囲
対応できること:
- {対応できる問い合わせ1}
- {対応できる問い合わせ2}
- {対応できる問い合わせ3}
対応しないこと:
- {対応しない内容1}
- {対応しない内容2}
# 必ず確認する情報
- {確認項目1}
- {確認項目2}
- {確認項目3}
# 会話トーン
{丁寧/親しみやすい/簡潔/事務的 など}
# 出力形式
次の形式で出力してください。
1. シナリオ全体の目的
2. 会話開始メッセージ
3. ユーザー発話の分類
4. 分岐ごとの質問と返答
5. 有人対応へ切り替える条件
6. 終了メッセージ
7. 運用前に人が確認すべき点
# 制約
- 個人情報やパスワードを入力させない
- 判断できない内容は断定せず、担当者確認へつなぐ
- ユーザーに表示する文面はそのまま使える自然な日本語にする
- 長すぎる返答は避け、1メッセージは原則2文以内にする
このテンプレートの狙いは、AIに「会話文を書いて」と頼むのではなく、会話設計に必要な材料を先に渡すことです。OpenAIのプロンプト作成ガイドでも、目的、文脈、形式、長さを具体的に指定することが推奨されています。チャットボットの場合は、そこに「対応範囲」と「有人対応の条件」を加えると、出力が運用寄りになります。
入力時に変える部分
テンプレートの中で毎回変えるべき場所と、固定しておくと安定しやすい場所を分けて考えます。
毎回変える項目
次の項目は、作るチャットボットごとに必ず書き換えます。
{チャットボットの目的}: 何を解決するボットか{想定ユーザー}: 顧客、社員、応募者、取引先など{対応できる問い合わせ}: ボットが答えてよい範囲{対応しない内容}: 誤回答を避けたい範囲{確認項目}: 会話中に集めたい情報{会話トーン}: ブランドや業務に合う言葉遣い
特に大事なのは「対応しない内容」です。ここが抜けると、AIはもっともらしい回答を作ろうとします。料金の確定、契約判断、健康・法律・金融に関わる助言などは、チャットボットだけで完結させない条件を書いておきます。
固定した方がよい条件
一方で、次の制約は多くの業務チャットで固定してかまいません。
- 個人情報やパスワードを求めない
- 不明点は断定せず、確認先を案内する
- 1メッセージを短くする
- 最後に人の確認ポイントを出す
- 会話の終了条件を明示する
Anthropicのプロンプトエンジニアリング資料では、成功条件を先に定義し、テストできる形にすることが重視されています。チャットボットのシナリオでも、「自然に話せるか」だけではなく、「必要情報が集まるか」「危ない質問を人に渡せるか」を確認項目に入れると実務で使いやすくなります。
NG例と改善例
失敗しやすいプロンプトは、会話の目的や制約が薄いまま、文面だけを依頼しているものです。
NG例
ECサイト用の問い合わせチャットボットの会話例を作ってください。
丁寧でわかりやすくしてください。
この指示でも文章は出ます。ただし、次のような問題が起きやすくなります。
- 配送、返品、支払いなどの範囲が混ざる
- 注文番号など、必要な確認項目が抜ける
- どこで有人対応に切り替えるかが曖昧になる
- 実装担当者が分岐を読み取りにくい
改善例
ECサイトの「配送状況問い合わせ」に対応するチャットボットの会話シナリオを作成してください。
目的は、購入済み顧客から配送状況に関する問い合わせを受け、注文番号と登録メールアドレスの確認後、配送状況確認ページへ案内することです。
対応範囲:
- 配送状況の確認方法
- 配送予定日の見方
- 不在票がある場合の案内
対応しない範囲:
- 住所変更の確定
- 返金判断
- 配送会社への直接交渉
出力は、会話ステップ、ユーザー発話例、ボット返答、次の分岐、有人対応条件を含む表形式にしてください。
改善点は、用途を「問い合わせ全般」から「配送状況問い合わせ」に絞ったことです。さらに、対応しない範囲と出力形式を指定したため、AIは会話文だけでなく運用に必要な分岐も作りやすくなります。
出力を安定させるコツ
会話シナリオは、出力形式を決めるほど比較しやすくなります。最初から自由な長文で出させるより、表やJSON風の形にすると、抜け漏れを見つけやすくなります。
表形式で出す指定
業務担当者がレビューするなら、表形式が扱いやすいです。
出力は次の列を持つ表にしてください。
- ステップ番号
- ユーザーの状態
- ユーザー発話例
- ボット返答
- 確認する情報
- 次の分岐
- 有人対応が必要な条件
表にすると、「このステップで何を聞くのか」「次にどこへ進むのか」が見えます。WordPressや社内ドキュメントに貼る場合も、レビューしやすい形式です。
JSON風で出す指定
開発担当者に渡す前の設計メモなら、JSON風の出力も便利です。
出力は次のJSON風の構造にしてください。
実装用の厳密なJSONではなく、設計レビューしやすい読み物として整えてください。
[
{
"step": "ステップ名",
"user_intent": "ユーザーの目的",
"bot_message": "ボットの返答文",
"required_info": ["確認項目"],
"next_step": "次の分岐",
"handoff_condition": "有人対応条件"
}
]
GoogleのGemini APIドキュメントでも、タスクを細かく分け、具体例や出力形式を示すことがプロンプト設計の基本として扱われています。チャットボット設計では、まさにこの「形式の指定」が効きます。
最後にレビュー観点を出させる
シナリオを作らせた後は、次の一文を追加すると確認が楽になります。
最後に、この会話シナリオを公開前に確認するためのチェックリストを10項目で出してください。
特に、個人情報、誤案内、有人対応への切り替え、メッセージの長さ、ユーザーが迷う表現を確認してください。
AIの出力は、完成品ではなく下書きです。社外向けチャットなら、担当部署、法務、カスタマーサポートの確認を通してから使う前提にします。
活用例と応用パターン
同じテンプレートでも、目的を変えると別の業務に使えます。ここでは、入力項目をどう変えるかに絞って整理します。
カスタマーサポート
目的は、問い合わせを分類し、自己解決できる内容と有人対応が必要な内容を分けることです。
目的: サービス利用者からのログインできない問い合わせに対応する
必ず確認する情報: 利用環境、表示されるエラー、試した操作
対応しないこと: パスワードの聞き取り、本人確認の代行、契約情報の変更
出力形式: 会話ステップ表
ログイン関連では、IDやパスワードを直接聞かない条件を入れることが重要です。代わりに、公式の再設定ページや本人確認済みの窓口へ案内します。
予約受付
目的は、予約に必要な情報を過不足なく集めることです。
目的: 店舗の来店予約を受け付ける
必ず確認する情報: 希望日時、人数、希望メニュー、連絡方法
対応しないこと: 確定していない空き枠の断定、特別対応の確約
出力形式: 分岐付きの会話フロー
予約受付では、会話の自然さよりも確認漏れ防止が大事です。日時、人数、メニュー、連絡先のどれかが抜けると、結局スタッフが確認し直すことになります。
社内FAQ
目的は、社員が手続き先や必要書類をすぐ見つけられる状態にすることです。
目的: 社員からの経費精算に関する質問に回答する
必ず確認する情報: 申請種別、利用日、領収書の有無、締切日
対応しないこと: 承認可否の判断、例外処理の確約
出力形式: FAQ型の会話シナリオ
社内FAQでは、部署ごとの例外が混ざりやすいです。例外が多い業務では、「判断できない場合は担当部署へつなぐ」と明記しておくと、誤案内を減らせます。
仕上げ用チェックリスト
最後に、AIが出した会話シナリオをそのまま使う前に確認します。
- ユーザーの目的が1つに絞られているか
- 最初のメッセージが短く、何ができるか分かるか
- 必要な確認項目が抜けていないか
- 個人情報や機密情報を聞きすぎていないか
- 対応できない内容が明記されているか
- 有人対応へ切り替える条件が具体的か
- 1メッセージが長すぎないか
- ユーザーが次に何をすればよいか分かるか
- 表やJSON風の形式でレビューしやすいか
- 公開前に担当部署が確認する前提になっているか
チャットボットの会話シナリオは、AIに一度で完成させるものではありません。まず目的、対応範囲、確認項目を入れて下書きを作り、次に実際の問い合わせ例に当てて分岐を直す。この順番で進めると、見た目だけ自然な会話ではなく、現場で直しながら使えるシナリオになります。
次に見るべきポイントは、実際の問い合わせログとの照合です。よく出る質問がシナリオに入っているか、逆にほとんど使われない分岐が増えすぎていないか。そこを確認してから、チャットボットに組み込む形へ進めるのが安全です。
