部下への改善フィードバックをAIで言語化するプロンプト|事実・影響・次の行動に分ける実務テンプレート
部下に改善点を伝えるとき、AIに任せるべきなのは評価そのものではなく、確認済みの事実を、相手が行動に移せる言葉へ整える作業です。
このテンプレートは、注意が曖昧になりやすい管理職や、言葉が強くなりすぎないか心配なリーダー向けです。観察した行動、仕事への影響、期待する次の行動を入力すると、1on1で使う会話案と面談後のフォロー文を作れます。
この記事で分かることは次のとおりです。
- 改善フィードバックに必要な入力項目
- そのまま使える汎用LLM向けプロンプト
- 感情的・抽象的な指摘を避ける方法
- 出力を安定させる追加指定
- 1on1、文書、リモート面談への応用方法
このプロンプトで作るのは「叱る文章」ではない
完成させるのは、本人が次回から何を変えればよいか分かる会話案です。
たとえば「もっと主体性を持ってほしい」だけでは、部下は次に取るべき行動を判断できません。「納期に遅れそうだと分かった時点で、期限の前営業日までに状況と支援の要否を共有してほしい」まで具体化すると、改善の基準が見えます。
AIへ渡す情報も、性格の評価ではなく業務上確認できる材料に絞ります。
- いつ、どの業務で起きたか
- 本人が実際に取った行動
- チーム、顧客、納期、品質への影響
- 本来期待していた行動
- 次回から実行してほしい具体策
- 上司が提供できる支援
ここがポイント: AIに「厳しく注意して」と頼むのではなく、事実と期待行動の間を埋めてもらいます。事実が不足している場合は、文章を作らせず質問させるのが安全です。
コピペ用フィードバックプロンプト
以下はChatGPT、Claude、Geminiなどの対話型AIで使える汎用テンプレートです。モデルやサービスによって表現は変わりますが、2026年7月時点で広く使えるよう、特定機能に依存しない形にしています。
# 役割
あなたは、職場の1on1を支援する文章編集者です。
管理職が確認した事実をもとに、部下へ改善点を伝える会話案を作成してください。
人事評価や処分の判断はせず、提供された情報の整理と言語化に限定してください。
# 目的
相手の人格を否定せず、次回から変える行動が具体的に分かるフィードバックを作る。
# 入力情報
- 相手の役割: {役職・担当業務}
- 伝える場面: {定例1on1/臨時面談/案件振り返り}
- 観察した事実: {日時・業務・実際の行動}
- 仕事への影響: {納期・品質・顧客・チームへの具体的な影響}
- 本来期待していた行動: {その場で求めていた行動}
- 次回から望む行動: {いつ・何を・どの水準で行うか}
- 本人の事情として確認済みの情報: {本人から聞いた内容。なければ「なし」}
- 上司が提供できる支援: {確認機会・資料・研修・作業調整など}
- 避けたい表現: {威圧的な表現・人格評価・断定など}
# 作成ルール
1. 入力された事実と推測を混ぜない。
2. 性格、能力、意欲を根拠なく評価しない。
3. 「いつも」「普通は」「やる気がない」など、範囲が曖昧な表現を使わない。
4. 観察した行動、仕事への影響、期待する次の行動の順で整理する。
5. 相手の認識や事情を確認する質問を1つ入れる。
6. 改善策を一方的に確定せず、本人と合意するための問いかけを入れる。
7. 入力にない事実、会話、感情、動機を補わない。
8. 重要な情報が不足している場合は原稿を作らず、確認質問を最大5つ出す。
# 出力形式
次の順で出力してください。
## 面談前の確認
- 事実として確認できること
- 推測または確認が必要なこと
## 1on1で話す会話案
200〜350字。口頭で自然に読める文章にする。
## 本人に尋ねる質問
- 認識や事情を確認する質問
- 改善策を一緒に決める質問
## 合意する次の行動
- 本人が行うこと
- 上司が支援すること
- 確認日
## 面談後のフォロー文
社内チャットまたはメール向けに150字以内で作る。
このテンプレートの中心は、AIへ「不足情報を勝手に埋めない」と明記している点です。Googleの公式プロンプト設計ガイドも、明確で具体的な指示、文脈の提供、出力形式の指定、例示を推奨しています。役割・入力・制約・出力を見出しで分ける構成は、そうした原則を実務に落とし込んだものです(Google AI for Developers)。
入力時に変える項目と固定する条件
毎回変えるのは事実関係、固定するのは文章の安全柵です。
毎回入力する項目
{}で囲まれた箇所は、面談ごとに書き換えます。特に重要なのは次の4項目です。
{観察した事実}:第三者が読んでも出来事を特定できる内容{仕事への影響}:遅延、手戻り、確認工数など実際に生じた結果{次回から望む行動}:期限、頻度、報告先、完成条件{上司が提供できる支援}:本人だけに改善責任を押しつけないための支援
入力例は次のように書きます。
- 観察した事実: 7月22日締切の見積書について、当日16時に未完成であるとの連絡があった
- 仕事への影響: 営業担当による顧客への提出が翌日にずれた
- 次回から望む行動: 締切に間に合わない可能性が出た時点で、遅くとも前営業日の15時までに進捗、見込み、支援の要否を共有する
- 上司が提供できる支援: 作成途中の見積書を前営業日の午前中に確認する
固定しておく条件
次の指定は、案件ごとに消さずに残します。
- 入力にない事実や動機を補わない
- 人格や適性を評価しない
- 事実と推測を分ける
- 本人の認識を確認する質問を入れる
- 双方の次の行動と確認日を出す
この固定条件があることで、AIが滑らかな文章を作るために空白を推測で埋めるのを防ぎやすくなります。
なお、氏名、健康情報、家庭事情、顧客の機密情報などを入力する前に、所属組織のAI利用規程と使用サービスのデータ取り扱い条件を確認してください。不要な固有情報は「担当者A」「顧客B」のように置き換えます。
NG例から改善点を見る
失敗しやすいのは、抽象的な不満をAIに整文させる使い方です。 材料が曖昧なら、出力も具体性を欠きます。
NG例
報告が遅くて周囲に迷惑をかける部下へ、主体性を持つよう厳しく伝える文章を書いてください。
この指示には、いつ、どの報告が、どの程度遅れ、何に影響したのかがありません。「迷惑」「主体性」「厳しく」といった評価語だけが強いため、AIは一般論か威圧的な文章を返しやすくなります。
改善例
7月22日締切の見積書が未完成だと当日16時に連絡があり、顧客への提出が翌日にずれました。
次回からは、遅延の可能性が出た時点で、遅くとも前営業日の15時までに、進捗・完成見込み・支援の要否を共有してほしいと伝えます。
本人の認識を確認し、上司ができる支援も一緒に決める1on1の会話案を作ってください。
人格評価や、入力にない動機の推測は含めないでください。
変えたのは言葉の柔らかさだけではありません。
- 「報告が遅い」を日時と行動に置き換えた
- 「迷惑」を実際に起きた提出遅延に置き換えた
- 「主体性」を期限付きの報告行動に置き換えた
- 上司からの一方通行ではなく、本人への確認を加えた
改善後も、AIの出力をそのまま読み上げる必要はありません。本人との関係、これまでの指導内容、社内規程に照らし、管理職自身が内容を確定します。
出力を安定させる3つのコツ
出力形式、禁止事項、確認手順を分けて指定すると、修正しやすい原稿になります。
1. 用途別に文章を分ける
口頭の会話案と記録用文書では役割が違います。ひとつの長文にまとめず、用途ごとに字数と形式を指定します。
- 1on1用:口頭で自然な200〜350字
- 社内チャット用:要点を150字以内
- 面談記録用:事実、本人の説明、合意事項を箇条書き
2. 「書かないこと」だけで終わらせない
「威圧的にしない」という禁止だけでは、望む表現が定まりません。代わりに取る行動も指定します。
人格への評価は書かず、観察した行動と業務上の影響を記載する。
命令だけで終えず、本人の認識を確認する質問を入れる。
Googleの公式ガイドでは、避けるべき例だけを示すより、望ましい出力例を示す方法が推奨されています。社内で良いフィードバック文の形式が決まっているなら、匿名化した短い見本を1件添えると、構成をそろえやすくなります。
3. 生成後に事実確認をさせる
文章を作らせた後、別の指示で点検させます。
作成した原稿を点検してください。
- 入力にない事実、感情、動機を追加していないか
- 人格評価に読める表現がないか
- 次の行動に期限または確認時期があるか
- 本人の説明を聞く質問があるか
- 上司側の支援が明記されているか
問題があれば、該当箇所、理由、修正文を箇条書きで示してください。
AIによる点検は補助です。事実の正確性、評価の妥当性、就業規則や人事手続きとの整合性は、管理職や人事担当者が確認します。
活用例:場面に合わせて追加指定する
基本テンプレートは残し、場面ごとに出力部分だけを差し替えます。
定例1on1で使う
普段の対話に合わせ、短く、相手が話せる構成にします。
追加条件:
- 冒頭の説明は90秒以内で話せる長さにする
- 上司の発言を連続させず、途中に確認質問を入れる
- 最後に次回確認する日付を合意できる問いを置く
リモート面談で使う
音声だけでも論点を追えるよう、話題を詰め込みません。
追加条件:
- 一度に扱う改善点は1つに絞る
- 事実、影響、期待行動をそれぞれ短い文にする
- 相手が考える時間を取る位置を「ここで回答を待つ」と示す
面談後の認識違いを防ぐ
記録文では感想を減らし、合意事項を明確にします。
追加の出力形式:
- 確認した事実
- 本人から説明された内容
- 合意した改善行動
- 上司が提供する支援
- 次回の確認日
本人が合意していない内容は「未合意」と明記してください。
懲戒、ハラスメント、休職、健康状態、雇用継続などに関わる場面は、通常の業務改善フィードバックと分けて扱う必要があります。AIで文面を整える前に、人事・法務・社内相談窓口へ確認してください。
使用前チェックリスト
最後に、生成された文章を次の順で確認します。
- [ ] 日時、案件、行動が事実と一致している
- [ ] 推測を事実のように書いていない
- [ ] 性格や意欲を決めつけていない
- [ ] 業務への影響を具体的に説明している
- [ ] 次回の行動に期限、頻度、基準のいずれかがある
- [ ] 本人の認識を聞く質問がある
- [ ] 上司が提供する支援を示している
- [ ] 合意内容を確認する日が決まっている
- [ ] 機密情報や不要な個人情報を入力していない
- [ ] 人事判断をAIへ委ねていない
最も重要な確認点は、文章が丁寧かどうかではありません。面談後、本人と上司が「次に何をするか」を同じ言葉で説明できるかです。説明できなければ、期待行動と確認日をもう一段具体化してから面談に臨みましょう。
