顧客攻略を「次の一手」まで落とし込む法人営業アカウントプラン作成プロンプト
法人営業のアカウントプランを作るなら、AIに「この会社の攻略法を考えて」と頼むだけでは足りません。顧客情報を事実・仮説・不足情報に分け、案件目標、関係者、課題、行動計画まで指定することが重要です。
この記事では、営業担当者や営業マネージャーが使える汎用LLM向けテンプレートを紹介します。狙う出力は、きれいな企業分析ではなく、担当者が次の商談準備に使えるアカウントプランです。
この記事で分かることは次のとおりです。
- アカウントプラン作成前に集める情報
- そのままコピーして使えるプロンプト
- AIに事実と推測を混同させない指定方法
- 曖昧な分析を具体的な営業行動へ変えるコツ
- 新規開拓、既存顧客、失注案件への応用方法
ここがポイント: AIに攻略先を決めてもらうのではなく、手元の情報を整理し、仮説と次の確認事項を明確にするために使います。
このプロンプトで作るアカウントプラン
完成形は、顧客理解から30・60・90日の行動計画までを一本につないだ営業計画です。
単なる企業概要ではありません。営業担当者が「誰に、何を確認し、どの提案へ進むか」を判断できる状態を目指します。
想定する利用場面
- 重点顧客への新規提案を始める
- 既存顧客の利用部門や契約範囲を広げる
- 長期間動いていない案件を見直す
- 営業マネージャーとの案件レビューを準備する
- 担当変更時に顧客情報と営業方針を引き継ぐ
AIへ渡す材料には、CRMの案件情報、商談メモ、顧客が公開している事業情報、自社サービスの提案条件などを使います。ただし、機密情報や個人情報を入力できるかどうかは、自社の情報管理規程と利用サービスの契約条件を先に確認してください。
出力させる項目
このテンプレートでは、次の順序でアカウントプランを作ります。
- アカウントの要約
- 営業目標と期限
- 顧客の事業課題に関する事実と仮説
- 関係者マップ
- 自社提案との接点
- 競合・現状維持を含む障壁
- 不足情報と確認質問
- 30・60・90日の行動計画
- リスクと見直し条件
順序にも意味があります。企業分析から始めても、営業目標と関係者が曖昧なら行動にはつながりません。そこで、最初に目標を固定し、その達成に必要な情報だけを分析させます。
コピペ用アカウントプラン作成プロンプト
以下のテンプレートは、事実と仮説を分離しながら実行計画まで作る構成です。 {} 内を自社や顧客の情報に置き換えて使用してください。
# 役割
あなたは、複雑な法人取引の営業計画を整理するセールスプランナーです。
提供された情報だけを根拠に、担当者が実行できるアカウントプランを作成してください。
# 目的
対象アカウントに対して、{営業上の目標}を{期限}までに達成するための計画を作る。
# 対象アカウント
- 企業・組織名: {顧客名または匿名名}
- 業界: {業界}
- 事業概要: {確認できている事業概要}
- 規模・地域: {従業員規模、拠点、対象地域など}
- 現在の取引状況: {未取引/商談中/既存顧客/休眠など}
# 営業目標
- 目標: {新規受注、契約更新、利用部門拡大など}
- 期限: {YYYY年MM月}
- 目標金額または範囲: {金額、席数、拠点数など。未定なら未定と記載}
- 現在の商談段階: {初回接触前、課題確認中、提案済みなど}
- 次回予定: {日時、相手、予定している議題}
# 顧客について確認済みの情報
{公開情報、CRM情報、商談メモなどを箇条書きで入力}
# 関係者情報
{氏名または役割、所属部門、関心、決裁への関与、接触状況を入力}
# 自社の提案情報
- 提供サービス: {サービス名と概要}
- 解決できる課題: {具体的な課題}
- 導入条件: {価格帯、導入期間、必要な体制など}
- 導入事例として提示できる情報: {業界、課題、成果。なければ「なし」}
- 提案できないこと: {対象外、未対応、保証できない成果など}
# 競合・障壁
{競合製品、内製、現状維持、予算、時期、社内調整など。未確認は未確認と記載}
# 作成ルール
1. 入力にある内容を「確認済みの事実」として扱う。
2. 入力にない情報を事実として補完しない。
3. 推測が必要な場合は「仮説」と明記し、仮説を確認する質問も付ける。
4. 顧客の課題と自社サービスの機能を直接結び付けず、間に期待される業務上の変化を示す。
5. 関係者は、役割、関心、影響力、現在の関係、次の働きかけで整理する。
6. 行動項目には、担当者、期限、相手、目的、完了条件を付ける。
7. 情報が足りない箇所は、一般論で埋めず「不足情報」にまとめる。
8. 営業担当者の都合だけでなく、顧客側が行動する理由と負担も示す。
# 出力形式
次の見出しでMarkdown形式にしてください。
## 1. エグゼクティブサマリー
- 現在地
- 目標
- 最優先の攻略課題
- 次に取るべき行動
## 2. 事実・仮説・不足情報
「確認済みの事実」「営業仮説」「不足情報」を分けて箇条書きにする。
## 3. 関係者マップ
各関係者について、役割/関心/影響力(高・中・低)/現在の関係/次の働きかけを示す。
不明な項目は「未確認」とする。
## 4. 顧客課題と提案仮説
顧客の課題候補ごとに、根拠/期待される業務上の変化/自社が支援できること/確認質問を示す。
## 5. 競合・障壁・リスク
競合製品だけでなく、内製、先送り、現状維持も含める。
## 6. 30・60・90日アクションプラン
各行動について、実施時期/担当者/相手/行動/目的/完了条件を示す。
## 7. 次回商談で聞く質問
優先順位の高い順に最大7問。各質問の確認意図も付ける。
## 8. レビュー条件
計画を見直す出来事、期限、判断基準を示す。
# 最終確認
出力前に次を確認してください。
- 事実と仮説が混ざっていないか
- 根拠のない企業情報や人物情報を追加していないか
- すべての行動に期限と完了条件があるか
- 顧客側の利点または行動理由が示されているか
- 不明な情報を「未確認」と表示しているか
入力情報が多い場合は、資料を先に貼り、その後に「以上の情報だけを基に、次の指示を実行してください」と続けてテンプレートを置く方法もあります。Googleの公式ガイドでも、長い文脈では資料と指示を明確に区切り、具体的な依頼を文脈の後ろに置く方法が案内されています。Google AI for Developersのプロンプト設計ガイドも参考になります。
入力時に変える項目と固定する条件
毎回変えるのは顧客固有の情報であり、事実と仮説を分けるルールは固定します。
毎回入力する項目
最低限、次の情報を用意します。
{営業上の目標}: 「受注する」ではなく、「情報システム部門との課題確認を終え、提案合意を得る」など途中目標まで具体化する{期限}: 四半期末などの曖昧な表現ではなく年月を入れる{現在の取引状況}: 接点の有無、契約範囲、過去の失注などを記載する{確認済みの情報}: 情報源と確認日も添えると更新しやすい{関係者情報}: 氏名が入力できない場合は「利用部門責任者」など役割名で代替する{自社の提案情報}: できることだけでなく、提案対象外も明記する{競合・障壁}: 他社だけでなく、予算未確保や現状維持も含める
情報が少ない段階で、すべてを埋める必要はありません。「未確認」と正直に入力した方が、AIは不足情報を確認質問へ変換しやすくなります。
固定した方がよい条件
次の指示は、案件ごとに外さないことをおすすめします。
- 入力にない情報を事実として補わない
- 推測には「仮説」と表示する
- 不明な項目は「未確認」と書く
- 行動には担当者、期限、目的、完了条件を付ける
- 顧客課題と自社機能の間に、期待する業務上の変化を置く
- 計画を見直す条件を最後に示す
特に重要なのは、空欄をもっともらしい文章で埋めさせないことです。アカウントプランでは、分からない点そのものが次の調査や商談質問になります。
NG例と改善例
失敗の主因は、AIに与える目的と根拠が曖昧なまま「戦略」を求めることです。
NG例: 企業名だけで攻略法を求める
A社向けの営業戦略とアカウントプランを作ってください。
この指示では、目標、商談段階、自社サービス、関係者、期限が分かりません。AIは一般的な企業分析や、確認していない課題を補ってしまう可能性があります。
改善するなら、少なくとも根拠の範囲と次の行動を指定します。
以下の商談メモだけを根拠に、A社の{利用部門拡大}に向けたアカウントプランを作成してください。
期限は{2026年12月}です。
事実、仮説、不足情報を分けてください。
仮説ごとに確認質問を付け、今後30日間の行動には担当者、相手、期限、完了条件を示してください。
{商談メモを貼り付ける}
NG例: SWOT分析だけで終わらせる
顧客をSWOT分析し、提案方針を考えてください。
SWOTの枠を埋めても、「来週、誰に何を聞くか」が決まるとは限りません。分析手法を指定するより、営業判断に必要な出力を直接指定します。
顧客情報から、受注を妨げる障壁を最大3件に絞ってください。
各障壁について、根拠、未確認事項、確認相手、確認質問、確認後に分岐する次の行動を示してください。
NG例: 行動が抽象的
「関係構築を強化する」「ニーズを深掘りする」「決裁者へアプローチする」だけでは、実行したかどうかを判断できません。
改善後は、完了条件まで書かせます。
- 抽象的: 利用部門との関係を強化する
- 具体的:
{8月15日}までに営業担当の{氏名}が{利用部門責任者}へヒアリングを実施し、現行業務の手戻りが発生する工程を3件確認する - 完了条件: 課題、発生頻度、関係部門、優先度が商談記録に入力されている
出力を安定させる3つのコツ
安定したアカウントプランには、形式指定、根拠の境界、レビュー手順が必要です。
1. 出力項目を先に固定する
「詳しく分析して」では、回答の長さも観点も毎回変わります。見出し、項目数、評価尺度を先に指定してください。
例えば関係者の影響力を「高・中・低」に統一し、質問数を最大7問と決めれば、案件同士を比較しやすくなります。Googleの公式ガイドも、表、箇条書き、段落など希望する形式を具体的に指定する方法を紹介しています。
2. 情報の区分をラベルで示す
入力が長いと、指示、参考情報、商談メモの境界が曖昧になります。Markdown見出しやタグを使って分けます。
<confirmed_facts>
{確認済みの顧客情報}
</confirmed_facts>
<meeting_notes>
{商談メモ}
</meeting_notes>
<our_offer>
{自社の提案情報}
</our_offer>
<task>
上記だけを根拠にアカウントプランを作成する。
</task>
区切り記号そのものより、同じ構造を一貫して使うことが大切です。
3. 一度で完成させず、レビューを分ける
情報量の多い案件では、作成と検証を二段階にします。最初の回答が出た後、次のプロンプトで点検してください。
先ほどのアカウントプランを監査してください。
次の問題だけを抽出してください。
- 入力に根拠がない事実
- 事実として書かれた仮説
- 顧客側の利点が不明な提案
- 担当者、期限、完了条件がない行動
- 決裁への関与が未確認なのに断定された関係者
問題ごとに「該当箇所」「問題の理由」「修正案」を示してください。
問題がない項目は「該当なし」としてください。
プロンプト設計は一度で固定するものではなく、出力を確認しながら調整する作業です。公式ガイドでも、具体的な指示、文脈の追加、複雑な作業の分割、反復改善が基本として説明されています。
活用例と応用パターン
基本テンプレートの骨格を保ち、営業目標とレビュー条件だけを用途別に変えます。
新規開拓で使う
新規開拓では、顧客内部の情報が少ないため、完成した攻略計画より「調べること」と「確かめること」を重視します。
追加する指示は次のとおりです。
公開情報から確認できる事実と、営業仮説を明確に分けてください。
初回接触前に確認すべき情報を優先度順に5件示してください。
各仮説について、初回商談で使える質問を1問作ってください。
既存顧客の拡張で使う
既存顧客では、現在の利用実態と拡張条件が中心です。未導入部門へ急いで提案する前に、現行部門の成果、負担、不満を確認します。
現在の契約範囲、利用部門、利用状況、評価、未解決課題を整理してください。
拡張候補ごとに、顧客側の利点、追加負担、必要な社内合意、確認すべき関係者を示してください。
既存契約への悪影響が考えられる場合はリスクとして明記してください。
停滞・失注案件を見直す
この場合は、過去の説明をそのまま受け入れず、確認済みの失注理由と営業側の解釈を分けます。
案件履歴から、確認済みの停滞・失注理由と営業側の推測を分けてください。
状況が変われば再提案できる条件を最大3件示してください。
再接触する条件を満たしていない場合は、無理に行動計画を作らず「保留」と判断してください。
「必ず再提案する」という前提を外すのがポイントです。予算、優先順位、担当体制が変わっていなければ、接触回数を増やしても顧客側の判断材料は増えません。
利用前のチェックリスト
AIへ送る前と、出力を営業計画へ採用する前の二度、確認します。
入力前のチェック項目は次のとおりです。
- [ ] 営業目標と期限を具体的にした
- [ ] 情報源と確認日を可能な範囲で付けた
- [ ] 顧客名、個人名、商談内容を入力してよい環境か確認した
- [ ] 自社が提供できないことも記載した
- [ ] 未確認事項を無理に埋めていない
出力後は、次を確認します。
- [ ] 事実と仮説が分かれている
- [ ] 関係者の影響力が根拠なく断定されていない
- [ ] 顧客の課題と自社機能を短絡的に結び付けていない
- [ ] 次の行動に担当者、相手、期限、完了条件がある
- [ ] 顧客側が行動する理由と負担が示されている
- [ ] 計画を中止・保留・修正する条件がある
アカウントプランの価値は、ページ数では決まりません。次回商談後に「どの仮説が事実になり、どれが外れたか」を更新できることが重要です。まずは30日以内の行動を1件選び、その完了条件を営業担当者とマネージャーで合意するところから始めてください。
