クレーム返信を冷静に整えるAIプロンプトテンプレート 事実確認・謝意・次の対応を崩さない書き方
クレーム対応文でAIを使うなら、目的は「うまい謝罪文を作ること」ではありません。感情的になりやすい文章を、事実・謝意・対応方針が伝わる文面に整えることです。
この記事では、顧客からの不満、問い合わせ、指摘に返信する前に使えるプロンプトテンプレートを紹介します。対象は、カスタマーサポート、営業、店舗運営、バックオフィスなどで、返信文を自分で確認しながら整えたい人です。
- 使う場面: クレーム・不満・強い指摘への返信文作成
- 想定モデル: ChatGPT、Claude、Gemini などの汎用LLM
- 出力形式: 件名、本文、確認すべきリスク、社内確認メモ
- 注意点: AIの文面をそのまま送らず、事実関係・社内方針・個人情報を必ず確認する
ここがポイント: クレーム対応文では、AIに「丁寧にして」とだけ頼むより、「認めてよい事実」「まだ断定しないこと」「次に案内できる対応」を分けて渡す方が安定します。
このプロンプトでできること
このテンプレートは、怒りや不満が含まれる問い合わせに対して、返信文を落ち着いた業務文に整えるためのものです。
クレーム対応で難しいのは、謝るかどうかだけではありません。実務では、次のような判断が同時に必要になります。
- 相手の不満を受け止める
- 事実確認が済んでいる部分だけを書く
- 会社側の過失を勝手に認めすぎない
- 返金、交換、再対応などの案内を正確にする
- 社内確認が必要な点を残す
- 強すぎる表現や言い訳に見える表現を避ける
AIは文章をなめらかにできますが、事実確認や責任判断の代わりにはなりません。だからこそ、プロンプトでは「本文を作って」だけでなく、本文とは別に確認点も出させる形にします。
なお、この記事は 2026年7月時点で一般的に使われているChatGPT、Claude、Geminiなどの文章生成AIを前提にしています。各サービスの仕様や管理画面は変わるため、機密情報や個人情報の扱いは、自社ルールと利用中サービスの設定を優先してください。
コピペ用プロンプトテンプレート
まずはそのまま使える形です。個人名、注文番号、電話番号、メールアドレスなどは、必要がなければ伏せ字にして入力してください。
あなたは企業のカスタマーサポート担当者です。
以下の情報をもとに、顧客への返信文を作成してください。
目的:
- 感情的に見えない、冷静で丁寧な返信にする
- 顧客の不満を受け止める
- 確認済みの事実だけを本文に入れる
- 未確認の内容は断定しない
- 必要に応じて、次の対応や確認予定を案内する
入力情報:
- 顧客からの連絡内容: {顧客から届いた文面または要約}
- 発生した商品・サービス: {商品名・サービス名}
- 確認済みの事実: {社内で確認できている事実}
- まだ確認できていない点: {未確認事項}
- こちらが案内できる対応: {返金、交換、再送、調査、担当部署確認など}
- 避けたい表現: {責任を断定する表現、強い謝罪、言い訳に見える表現など}
- 文体: {やや丁寧 / 標準的なビジネス文 / 簡潔}
- 文字数目安: {例: 600字以内}
制約:
- 法的責任や過失を断定しない
- 事実確認が済んでいない内容を本文で認めない
- 顧客を責める表現を使わない
- 過度にへりくだりすぎない
- 個人情報は本文に不要なら含めない
出力形式:
1. 件名案
2. 顧客への返信文
3. 送信前に社内確認すべき点
4. 表現が強すぎる箇所・弱すぎる箇所のチェック
このテンプレートの狙いは、AIに「返信文だけ」を作らせないことです。送信前の確認点まで出させると、担当者が危ない表現に気づきやすくなります。
入力時に変える部分
毎回変えるべき項目と、固定した方がよい項目を分けると、出力が安定します。
毎回変える項目
次の項目は、案件ごとに必ず入れ替えます。
{顧客から届いた文面または要約}: 原文を入れる場合は個人情報を削る{商品名・サービス名}: 相手が何に不満を持っているかを明確にする{社内で確認できている事実}: 日時、対応履歴、発送状況、契約内容など{未確認事項}: 調査中、担当部署確認中、ログ確認中など{返金、交換、再送、調査、担当部署確認など}: 実際に案内できる対応だけを書く
ここを曖昧にすると、AIはもっともらしい補足を作りがちです。たとえば「配送が遅れたようです」とだけ書くと、配送会社の問題なのか、社内出荷の遅れなのか、天候なのかがぼやけます。
固定しておくとよい項目
一方で、次の制約はテンプレートに残しておくと便利です。
- 未確認の内容を断定しない
- 法的責任や過失を勝手に認めない
- 顧客を責める表現を避ける
- 社内確認が必要な点を別枠で出す
- 本文と確認メモを分ける
OpenAI、Anthropic、Googleの各公式ガイドでも、良いプロンプトには具体的な目的、文脈、出力形式を含める考え方が示されています。クレーム対応文では、この「具体性」がそのままリスク管理につながります。
NG例と改善例
クレーム対応で失敗しやすいのは、AIへの指示が短すぎるケースです。文章は丁寧になっても、必要な確認が抜けます。
NG例: 丁寧さだけを頼む
以下のクレームに丁寧に返信してください。
{顧客からの文面}
この指示では、AIは何を認めてよいのか判断できません。結果として、まだ確認していない原因を断定したり、返金できないのに返金を匂わせたりする文面が出ることがあります。
改善例: 事実と未確認事項を分ける
以下の顧客連絡に対する返信文を作成してください。
顧客の主張:
{顧客の不満や要望}
確認済みの事実:
{確認できている履歴、日時、担当部署の回答}
未確認の点:
{まだ調査中の内容}
案内できる対応:
{現時点で案内可能な対応}
条件:
- 未確認の点は断定しない
- 顧客の不満には最初の段落で触れる
- 本文とは別に、送信前の確認点を3つ出す
改善点はシンプルです。AIに判断させる範囲を減らし、人間が確認した材料をもとに書かせています。
特に大事なのは、「未確認の点」を明示することです。クレーム対応では、書かない勇気も必要です。AIには空白を自然な文章で埋める癖があるため、埋めてはいけない空白を先に指定しておきます。
出力を安定させるコツ
クレーム対応文では、毎回ゼロから頼むより、出力の型を決めた方が確認しやすくなります。
1. 件名と本文を分けて出す
件名は短く、本文は丁寧に。ここを一緒にすると、件名まで長くなりがちです。
追加指示の例です。
件名は30文字以内で、責任や原因を断定しない表現にしてください。
本文は、冒頭でご連絡への謝意を示し、その後に確認状況と次の対応を説明してください。
「不具合のお詫び」よりも、「お問い合わせ内容の確認について」の方が適切な場面もあります。原因が未確認なら、件名で先に認めない方が安全です。
2. 本文の段落構成を指定する
返信文の構成は、次の4段落にすると読みやすくなります。
- 1段落目: 連絡への謝意と不便への受け止め
- 2段落目: 確認済みの事実
- 3段落目: 今後の対応または確認予定
- 4段落目: 結びと連絡先
追加指示にするなら、次のように書けます。
本文は4段落で作成してください。
1段落目は、連絡への謝意と不便への受け止め。
2段落目は、確認済みの事実。
3段落目は、今後の対応または確認予定。
4段落目は、結びの一文。
段落数を指定すると、AIの文章が長くなりすぎるのを防げます。スマホで読む顧客にも伝わりやすくなります。
3. 「謝罪」と「責任認定」を分ける
クレーム対応文では、謝意や不便へのお詫びは必要でも、原因や責任を断定できない場面があります。
たとえば、次のように指定します。
不快な思いをさせた点への配慮は示してください。
ただし、原因や責任の所在は未確認のため、当社の過失を断定する表現は使わないでください。
この一文を入れるだけで、「弊社の不手際により」のような表現を避けやすくなります。すでに過失が確認済みの場合は、逆に「確認済みの過失として明記する」と書き換えてください。
4. 最後にリスクチェックを出させる
本文を作ったあと、同じAIにチェックさせると確認漏れを減らせます。
上記の返信文について、送信前に確認すべきリスクを次の観点でチェックしてください。
- 未確認の事実を断定していないか
- 返金、補償、交換などを社内承認なしに約束していないか
- 顧客を責める表現がないか
- 個人情報や不要な内部事情が含まれていないか
- 文章が長すぎて要点が埋もれていないか
本文の作成とチェックを分けると、AIの役割が明確になります。OpenAIのプロンプトガイドでも、タスクを細かく分ける考え方が紹介されています。
場面別の追加プロンプト
同じクレーム対応でも、状況によって出したい文面は変わります。ここでは、業務で使いやすい追加指示を場面別に置きます。
返金や補償をまだ判断できない場合
返金や補償の可否はまだ判断できません。
本文では、返金を約束せず、確認後に改めて連絡する方針を丁寧に伝えてください。
顧客が不安にならないよう、確認予定と次の連絡目安を入れてください。
この場面では、曖昧に期待を持たせないことが重要です。「対応を検討します」だけでは、相手が返金されると受け取る可能性があります。
顧客側にも確認してほしい情報がある場合
顧客に追加で確認したい情報があります。
責める印象にならないよう、協力依頼の形で質問文を作成してください。
確認したい情報:
{確認したい情報のリスト}
条件:
- 質問は3点以内
- なぜ必要かを短く添える
- 命令口調にしない
クレーム対応では、顧客に情報提供を依頼するだけでも角が立つことがあります。「確認のため、差し支えなければ」といった表現を入れると、相手を責める印象を弱められます。
社内確認用メモも同時に作る場合
顧客への返信文とは別に、社内確認用メモを作成してください。
社内メモに含める内容:
- 顧客の主張
- 確認済みの事実
- 未確認の点
- 判断が必要な点
- 次に確認すべき担当部署
顧客向け本文には、社内事情や担当者名を入れないでください。
顧客向け文章と社内メモを混ぜないことが大切です。AIに一度で両方を出させる場合も、出力欄を分けておくと確認しやすくなります。
そのまま使える入力例
実際に使うときは、次のように材料を整理してから入力します。これは架空の例ですが、書き方の型として使えます。
顧客からの連絡内容:
注文した商品が指定日に届かず、イベントで使えなかった。対応が遅いと強い不満がある。
商品・サービス:
オンラインショップの商品配送
確認済みの事実:
- 注文日は7月1日
- 指定日は7月5日
- 出荷日は7月4日
- 配送会社の追跡では7月6日に配達完了
まだ確認できていない点:
- 遅延理由
- 配送会社側の詳細状況
- 返金対象になるかどうか
案内できる対応:
- 配送状況を確認し、翌営業日中に改めて連絡する
- 必要に応じて担当部署で対応可否を確認する
避けたい表現:
- 当社のミスと断定する表現
- 返金を約束する表現
- 配送会社だけの責任にする表現
文体:
標準的なビジネス文
文字数目安:
500字以内
この入力例で大事なのは、原因がまだ分かっていない点です。顧客には不便への配慮を示しつつ、本文では「確認中」として扱うのが自然です。
AIに任せすぎないためのチェックリスト
クレーム対応文は、送信前の人間チェックが前提です。最後に次の項目を確認してください。
- 顧客名、注文番号、住所、電話番号などを不要に入れていないか
- 原因や責任を、確認前に断定していないか
- 返金、補償、交換、特別対応を勝手に約束していないか
- 顧客の言い分を否定する表現になっていないか
- 「しかし」「ただし」が多く、言い訳に見えていないか
- 次に誰が、いつまでに、何をするかが分かるか
- 社内確認が必要な点を本文に書きすぎていないか
特に見落としやすいのは、「丁寧だが約束しすぎている文面」です。AIは相手を安心させようとして、実務上まだ言えない対応まで滑らかに書くことがあります。
モデル別に使うときの考え方
ChatGPT、Claude、Geminiのどれを使う場合でも、基本は同じです。目的、入力情報、制約、出力形式を分けて書くほど、確認しやすい返信文になります。
公式ドキュメントを見ると、各社とも「具体的な指示」「文脈の提供」「出力形式の指定」を重視しています。この記事のテンプレートも、その考え方に合わせて、本文だけでなく確認点まで出す形にしています。
使い分けで迷う場合は、モデル名よりも次の点を見てください。
- 社内で利用が許可されているサービスか
- 入力してよい情報の範囲が明確か
- 出力を保存・共有する運用が決まっているか
- 長文のクレーム内容を入れても読み落としが少ないか
- 最終確認者が本文とリスクメモを見比べられるか
モデルの性能差より、入力する情報の整理と送信前チェックの方が、実務では結果を左右します。
応用パターン
このテンプレートは、クレーム対応以外の業務文にも応用できます。ただし、目的に合わせて制約を入れ替えてください。
- 問い合わせ返信: 「質問への回答」と「未確認事項」を分ける
- 社内報告: 「顧客の主張」と「事実確認」を分ける
- 上司への相談: 「判断してほしい点」を先に出す
- FAQ作成: 個別案件の情報を抜き、一般化した回答にする
- 電話後のメール: 会話で合意した点と保留点を分ける
クレーム対応文の中心は、きれいな文章ではありません。相手が何に困っているか、こちらが何を確認済みか、次に何をするかを混ぜずに伝えることです。
最後にもう一度、実務で見るべき点を絞ります。
- 事実確認が済んだことだけ本文に入れる
- 謝意と責任認定を分ける
- 返金や補償は承認済みの範囲だけ書く
- AIには本文だけでなくリスクチェックも出させる
- 送信前に必ず人間が確認する
次にこのテンプレートを使うときは、まず顧客文面をそのまま貼る前に、「確認済み」「未確認」「案内できる対応」の3つに分けてください。そこを分けられるかどうかで、AIの返信文の安全性と読みやすさが大きく変わります。
