稟議書のたたき台をAIで作るプロンプトテンプレート 目的・費用・判断材料をそろえる書き方
稟議書の作成で時間がかかるのは、文章をきれいにする作業よりも、承認者が判断したい材料を抜けなく並べることです。
このテンプレートは、ChatGPTなどの生成AIに「稟議書の初稿」を作らせたい人向けです。新しいツール導入、外注依頼、備品購入、イベント出展、研修実施など、社内承認が必要な業務文書のたたき台作成に使えます。
ここがポイント: AIには最終決裁を任せず、目的・背景・費用・リスク・代替案・承認後の進め方を整理する補助役として使います。
この記事で扱うことは次の通りです。
- 稟議書のたたき台を作るコピペ用プロンプト
- 入力時に変える項目と、固定した方がよい条件
- NG例と改善例
- 出力を安定させる指定方法
- 実務で使う前の確認チェックリスト
なお、ChatGPTなどの外部サービスに入力する内容は、社内ルールに従ってください。OpenAIのヘルプでも、ChatGPT Team/Enterpriseなど一部の業務向けプランでは入力データの扱いが説明されていますが、会社ごとの契約や設定によって運用は変わります。個人情報、未公開の金額、取引先名、契約条件などは、必要に応じて伏せ字や仮名にして使うのが安全です。
このプロンプトで作れる稟議書の完成イメージ
このテンプレートは、承認者が読みたい順番で情報を並べるためのものです。
稟議書では、担当者が「必要だと思う理由」を長く書いても、承認者が判断できないことがあります。承認者が見たいのは、たとえば次のような情報です。
- 何を承認してほしいのか
- なぜ今必要なのか
- いくらかかるのか
- 期待する効果は何か
- 実施しない場合に何が困るのか
- リスクや注意点はあるか
- 承認後、誰がいつ何をするのか
AIに頼む価値は、この順番を最初からそろえられる点にあります。文章の見栄えより先に、判断材料の抜け漏れを減らします。
向いている場面
次のような「承認前の初稿作成」に向いています。
- SaaSや業務ツールの導入申請
- 外注費、制作費、開発費の承認
- 研修、セミナー、出張、採用イベントの実施申請
- PC、備品、撮影機材などの購入申請
- 既存契約の更新、プラン変更、追加発注
一方で、法務判断、会計処理、契約条件の確定、予算承認そのものはAIに任せる範囲ではありません。AIの出力は、担当者が社内ルールに合わせて確認する前提で使います。
コピペ用プロンプトテンプレート
まずは、このまま貼り付けて使える形です。{} の中を自分の案件に置き換えてください。
あなたは、社内稟議書の作成を支援する業務アシスタントです。
以下の情報をもとに、承認者が判断しやすい稟議書のたたき台を作成してください。
# 目的
{この稟議で承認してほしいことを1文で書く}
# 案件の概要
- 実施内容: {導入、購入、外注、更新、参加など}
- 対象部署・利用者: {部署名、人数、役割}
- 実施時期: {開始予定日、契約期間、購入希望日など}
- 関係者: {申請者、実施担当、確認者など}
# 背景・課題
- 現在困っていること: {現状の問題}
- 放置した場合の影響: {遅延、工数増、機会損失、リスクなど}
- これまでの対応: {手作業、既存ツール、暫定対応など}
# 申請内容
- 承認してほしい金額: {金額、税抜/税込、月額/年額}
- 支払先・購入先: {会社名やサービス名。外部に出せない場合は仮名}
- 内容の内訳: {ライセンス数、作業範囲、購入数など}
- 契約・利用期間: {期間}
# 期待する効果
- 定量効果: {削減時間、削減費用、対応件数、売上見込みなど。未確定なら「試算」と明記}
- 定性効果: {品質向上、属人化の軽減、確認漏れ防止など}
# 比較・代替案
- 他の候補: {候補があれば記載。なければ「未調査」}
- 今回の案を選ぶ理由: {価格、機能、納期、既存環境との相性など}
- 実施しない場合: {何が続くか、何ができないか}
# リスク・注意点
- 想定されるリスク: {費用超過、定着しない、情報管理、運用負荷など}
- 対策: {利用ルール、試用期間、担当者、確認フローなど}
# 出力条件
- 稟議書の形式で作成する
- 見出しは「件名」「申請目的」「背景」「申請内容」「費用」「期待効果」「比較・代替案」「リスクと対策」「承認後の進め方」にする
- 承認者が3分で読める分量にする
- 不明点は本文に混ぜず、最後に「確認が必要な項目」として箇条書きにする
- 断定できない数値は「概算」「試算」「確認中」と明記する
- 機密情報や個人情報は推測で補わない
このプロンプトの狙いは、AIに文章だけでなく「不足情報の分離」まで任せることです。不明点を本文に混ぜると、もっともらしい稟議書に見えても、あとで確認漏れが起きます。
入力時に変える部分と固定する部分
稟議書プロンプトでは、変える場所と変えない場所を分けると出力が安定します。
毎回変える項目
案件ごとに必ず変えるのは、次の項目です。
{この稟議で承認してほしいこと}{現在困っていること}{承認してほしい金額}{内容の内訳}{期待する効果}{リスクと対策}{承認後の進め方}
特に大事なのは金額と内訳です。「10万円くらい」ではなく、「初期費用5万円、月額1万円、初年度合計17万円」のように分けると、AIも費用欄を整理しやすくなります。
固定した方がよい条件
一方で、毎回あまり変えない方がよい条件もあります。
- 見出し構成
- 不明点を最後に分ける指定
- 推測で補わない指定
- 断定できない数値に「概算」「試算」を付ける指定
- 承認者が短時間で読める分量指定
ここを固定すると、案件が変わっても読みやすさがそろいます。社内で複数人が使う場合も、同じ見出しで出てくるためレビューしやすくなります。
NG例と改善例
稟議書作成で失敗しやすいのは、「いい感じに書いて」と頼んでしまうことです。AIは文章を整えますが、判断材料が足りないまま自然な文にしてしまうことがあります。
NG例: 情報が少なすぎる指示
新しい営業ツールを導入したいので、稟議書を書いてください。
費用は月3万円くらいです。効果がありそうな感じでお願いします。
この指示では、承認者が知りたい情報が足りません。
- 誰が使うのか分からない
- 何の課題を解決するのか分からない
- 年額や契約期間が分からない
- 他の選択肢と比べた理由がない
- 効果が事実なのか期待なのか区別できない
このまま出力させると、説得力のある文章に見えても、実際の承認フローでは差し戻されやすくなります。
改善例: 判断材料を渡す指示
営業部で利用する商談管理ツールの導入稟議書を作成してください。
目的: 営業担当8名の商談進捗を一元管理し、週次会議での確認工数を減らす
現状の課題: 案件情報が各担当者のスプレッドシートに分かれており、マネージャーが進捗確認に毎週2時間かけている
申請内容: 商談管理ツールの年間契約
費用: 月額30,000円、年間360,000円、税別
利用者: 営業担当8名、営業マネージャー2名
比較候補: 既存スプレッドシート運用の継続、別ツールA
選定理由: 既存ツールより入力項目が少なく、現在の営業フローに合わせやすい
懸念点: 入力が定着しない可能性がある
対策: 初月は営業マネージャーが週1回入力状況を確認する
出力は「件名」「申請目的」「背景」「申請内容」「費用」「期待効果」「比較・代替案」「リスクと対策」「承認後の進め方」で整理してください。
不明点は最後に分けてください。
改善後の指示では、AIが補う範囲が狭くなります。費用、利用者、課題、比較候補、リスクが入っているため、承認者が読みたい形に近づきます。
稟議書では、文章力よりも材料の渡し方が重要です。
出力を安定させるコツ
稟議書の出力を安定させるには、形式、制約、確認手順を分けて指定します。
1. 出力形式を先に固定する
「稟議書っぽく」ではなく、見出し名まで指定します。
見出しは次の順番にしてください。
1. 件名
2. 申請目的
3. 背景
4. 申請内容
5. 費用
6. 期待効果
7. 比較・代替案
8. リスクと対策
9. 承認後の進め方
10. 確認が必要な項目
順番を固定すると、毎回のレビュー観点も固定できます。上司や経理に確認してもらう前に、自分でも不足を見つけやすくなります。
2. 数値の扱いを指定する
AIは、与えられていない数値を自然に補ってしまうことがあります。稟議書ではこれは危険です。
次の指定を入れてください。
入力されていない金額、削減時間、効果、人数、日付は推測で補わないでください。
不明な場合は「確認が必要な項目」に分けてください。
これだけで、見栄えのよい推測を減らせます。特に費用対効果を書くときは、試算の前提を明記するのが大切です。
3. 承認者の立場を入れる
承認者が部長なのか、経理なのか、役員なのかで見るポイントは変わります。
- 部長: 業務上の必要性、部門目標との関係
- 経理: 金額、勘定科目、支払条件、予算枠
- 情報システム: セキュリティ、アカウント管理、既存環境との相性
- 役員: 費用対効果、全社方針との整合性、リスク
プロンプトには、次のように加えると実務寄りになります。
主な承認者は{承認者の役職・部門}です。
この承認者が気にしそうな観点を本文に反映し、不足情報があれば最後に列挙してください。
4. 最後に自己チェックさせる
初稿を出したあと、同じチャットで次のように依頼します。
上記の稟議書案を、承認者の視点でチェックしてください。
不足している情報、曖昧な表現、金額や効果の確認が必要な箇所を箇条書きで指摘してください。
本文はまだ書き直さず、指摘だけを出してください。
いきなり書き直させるより、先に指摘だけを出した方が確認しやすくなります。差し戻しを減らしたいときに有効です。
用途別の追加プロンプト
同じ稟議書でも、案件の種類によって入れるべき情報は変わります。ここでは、よく使う追加指定を紹介します。
ツール導入の稟議
ツール導入では、費用だけでなく運用開始後の管理も見られます。
この稟議は業務ツール導入に関するものです。
次の観点を必ず含めてください。
- 利用対象者と人数
- 既存業務のどこが変わるか
- 導入初月の運用方法
- アカウント管理者
- セキュリティや情報管理で確認が必要な点
外注・制作依頼の稟議
外注では、依頼範囲が曖昧だと後で追加費用が発生しやすくなります。
この稟議は外注依頼に関するものです。
次の観点を必ず含めてください。
- 依頼する作業範囲
- 納品物
- 納期
- 検収方法
- 社内で対応する作業と外注先に依頼する作業の分担
- 追加費用が発生しそうな条件
研修・セミナー参加の稟議
研修では、「学びたい」だけでなく、業務にどう戻すかが重要です。
この稟議は研修またはセミナー参加に関するものです。
次の観点を必ず含めてください。
- 参加対象者
- 参加目的
- 現在の業務課題との関係
- 参加後に社内へ共有する内容
- 成果を確認する方法
契約更新の稟議
更新稟議では、新規導入とは違い、これまでの利用状況が判断材料になります。
この稟議は既存契約の更新に関するものです。
次の観点を必ず含めてください。
- 現在の契約内容
- 利用実績
- 更新しない場合の影響
- 契約条件の変更有無
- 継続利用する理由
- 見直すべき運用課題
そのまま使う前のチェックリスト
AIが作った稟議書案は、提出前に必ず人が確認します。特に次の項目は、提出前に見直してください。
- 金額、税抜税込、月額年額が一致しているか
- 契約期間、支払時期、開始日が正しいか
- 効果の数値に根拠や前提があるか
- 取引先名、個人名、社外秘情報を不用意に入力していないか
- 比較候補を調べた事実と、AIが補った文章が混ざっていないか
- 社内の稟議フォーマットや承認ルートに合っているか
- 法務、経理、情報システムの確認が必要な案件ではないか
このチェックで引っかかった箇所は、AIに再入力する前に元情報を整理します。AIに「それらしく直して」と頼むより、事実を1つずつ追加した方が、稟議書の質は上がります。
使い分けの前提: ChatGPTだけに閉じなくてもよい
この記事ではChatGPTで使う前提のテンプレートとして書いていますが、同じ考え方はClaude、Gemini、その他の汎用LLMでも使えます。
サービスごとの細かい機能やデータ利用条件は、プランや設定によって変わります。そのため、業務利用では次の2つを先に確認してください。
- 自社で利用が許可されているAIサービスか
- 入力してよい情報、伏せるべき情報、保存される情報の扱いは何か
OpenAIはAPIのデータ利用について、顧客データをモデル学習に使わない旨を公式ページで説明しています。一方、ChatGPTの各プランや管理設定は利用環境によって異なります。稟議書のように社内情報を含む文書では、テンプレートの便利さよりも先に、入力してよい範囲を決めることが重要です。
最後に見るべきポイント
稟議書プロンプトは、文章作成のためだけに使うものではありません。むしろ、承認前に足りない情報を見つけるための道具です。
提出前に見るべきポイントは、次の3つです。
- 承認してほしい内容が1文で言えるか
- 費用、効果、リスクが同じ粒度で並んでいるか
- 不明点が本文に紛れ込まず、確認項目として分かれているか
この3つがそろうと、AIが作った初稿でも人が直しやすくなります。次に改善するなら、社内の実際の稟議フォーマットに合わせて、見出し名と確認項目を固定するところから始めてください。
