AIで研究テーマを絞り込むプロンプト|問い・仮説・調査方法まで整理するテンプレート
「関心のある分野は決まったのに、研究テーマが広すぎる」「問いを作っても、調査できる形にならない」。そんなときに使えるのが、研究テーマとリサーチクエスチョンの候補を段階的に作るプロンプトです。
対象は、卒業論文・レポート・自主研究の入口で迷っている学生や、社内調査の論点を整理したい人。AIに完成した問いを丸投げするのではなく、対象・変化・範囲・調査可能性を順番に絞るために使います。
この記事で分かることは次のとおりです。
- 広い関心から研究テーマを作るプロンプト
- リサーチクエスチョンを評価する基準
- 入力時に変更する項目と、固定したい条件
- 曖昧な指示を改善する方法
- 文献調査や指導教員への相談につなげる手順
このプロンプトで作るのは「調べられる問い」
良い出力は、もっともらしい題名ではなく、限られた期間と資料で検討できる問いです。
たとえば「リモートワークについて研究したい」だけでは、対象も期間も論点も広すぎます。ここから、誰を対象にするのか、何の変化を見るのか、どの資料を使うのかを決める必要があります。
研究テーマとリサーチクエスチョンには、次の違いがあります。
- 研究テーマ:研究する領域や対象を示す
- リサーチクエスチョン:調査によって答えを出したい具体的な問い
- 仮説:問いに対する暫定的な答え。研究分野や方法によっては設定しない
George Mason UniversityのWriting Centerは、リサーチクエスチョンの条件として、明確で、焦点が絞られ、簡潔で、単純な事実確認では答えられず、議論の余地があることを挙げています。また、問いを作る前の予備調査も推奨しています。How to Write a Research Questionを確認すると、AIの候補を評価する軸がつかめます。
ここがポイント: AIに「面白いテーマ」を求めるだけでは不十分です。「どの資料で、どの範囲まで答えられるか」も同時に出させると、実行可能性を判断しやすくなります。
コピペ用プロンプトテンプレート
このテンプレートは、広い関心から複数の候補を作り、最後に有力案を比較する構成です。{}で囲んだ部分を自分の条件に置き換えてください。
あなたは研究計画の整理を支援するアシスタントです。
以下の情報をもとに、研究テーマとリサーチクエスチョンの候補を作成してください。
# 入力情報
- 関心のある分野: {例: リモートワークと人材育成}
- 特に気になる現象・問題: {例: 新入社員が相談相手を見つけにくいこと}
- 研究の目的: {例: 卒業論文/授業レポート/社内調査}
- 対象者・対象物: {例: 入社1年以内の社員}
- 対象地域・組織: {例: 日本国内の民間企業}
- 対象期間: {例: 2020年以降}
- 利用できる方法: {例: 公開資料の分析、半構造化インタビュー}
- 利用できない方法: {例: 大規模アンケート、社内機密データの利用}
- 調査期間: {例: 3か月}
- 専門分野・授業領域: {例: 経営学、組織行動論}
- すでに読んだ資料や分かっていること: {資料名、要点。なければ「未調査」}
# 作業手順
1. 入力内容から、広すぎる語と定義が必要な語を抽出する。
2. 「対象」「現象」「期間」「比較軸」「利用可能な資料・方法」を具体化する。
3. 異なる切り口で研究テーマを5案作る。
4. 各テーマについて、中心となるリサーチクエスチョンを1つ作る。
5. 必要な場合のみ、中心の問いを支えるサブクエスチョンを2つまで作る。
6. 各案を評価し、実行可能性が高い上位3案を比較する。
# リサーチクエスチョンの条件
- Yes/Noや一つの事実確認だけでは答えられない
- 対象、範囲、期間が読み取れる
- 入力した方法と期間で調査できる
- 問いの中に、未確認の因果関係や価値判断を事実として埋め込まない
- 「影響」「効果」を使う場合は、それを測る指標候補を示す
- 入力情報だけでは判断できない内容を事実として補わない
- 先行研究の有無や新規性を断定しない
# 出力形式
以下の順で日本語の箇条書きにする。
1. 入力条件の整理
2. 定義または追加確認が必要な語
3. 研究テーマ5案
- 仮タイトル
- 中心となるリサーチクエスチョン
- サブクエスチョン(必要な場合のみ)
- 想定する対象と範囲
- 利用できる調査方法・資料
- この問いで明らかにできること
- 実行上の難点
4. 上位3案の比較
- 明確さ
- 調査可能性
- 研究目的との適合
- 必要な資料へのアクセス
5. 推奨案1つと、その理由
6. 次に行う予備調査
- 検索キーワード5個
- 確認すべき資料の種類
- 指導教員・担当者に確認する質問3個
不足情報がある場合は、勝手に埋めず、出力の冒頭で最大5問の確認質問をしてください。
Googleの公式プロンプト設計ガイドでも、明確で具体的な指示、必要な文脈、出力形式を与えることが基本とされています。複雑な依頼を構成要素に分ける方法も紹介されており、このテンプレートでは入力、作業手順、評価条件、出力形式を分離しています。Prompt design strategies
入力時に変える部分
出力の質を最も左右するのは、役割設定よりも研究上の制約です。 とくに、期間と利用できる資料を空欄にしないことが重要です。
最低限入力したい5項目
すべてを埋められない場合でも、次の項目は具体化してください。
{関心のある分野}:大きな領域{特に気になる現象・問題}:その領域で実際に調べたい変化や困りごと{対象者・対象物}:誰、何、どの資料を見るか{利用できる方法}:文献調査、インタビュー、公開データ分析など{調査期間}:提出期限から逆算した実働期間
「教育」「AI」「地域活性化」のような一語だけでは、候補が一般論に寄りやすくなります。「大学の初年次教育における生成AIの利用ルール」のように、対象と局面を足してください。
固定しておきたい条件
次の条件は、テーマを変えても残すのがおすすめです。
- 未確認の事実を補わない
- 新規性を断定しない
- 利用できない調査方法を提案しない
- 因果関係を前提にした問いを避ける
- 不足情報は質問として返す
AIは研究テーマの候補を整えることはできますが、先行研究を網羅した証明や、資料へのアクセス可能性の保証はできません。候補を採用する前に、文献データベースで検索し、指導教員や担当者に確認する工程が必要です。
NG例から改善点をつかむ
曖昧なプロンプトは、広い題名と一般的な問いを返しがちです。どこを直せばよいか、短い例で比べます。
NG例
AIと教育について、面白い研究テーマと研究質問を考えてください。
この指示には、対象者、教育段階、利用場面、調査方法、期間がありません。「AIは教育をどう変えるか」といった、短期間の研究では扱いにくい問いが出ても評価できません。
改善例
大学の授業で使われる生成AIを対象に、卒業論文の研究テーマを5案作ってください。
条件:
- 対象は日本の大学に在籍する学部1年生
- 論点は、レポート作成時の情報確認行動
- 調査期間は3か月
- 利用できる方法は先行研究のレビューと10人程度へのインタビュー
- 学習成果への因果効果は検証対象にしない
- 各案に、中心となる問い、必要な資料、実行上の難点を付ける
- 新規性は断定せず、確認用の検索キーワードを示す
改善した点は明確です。
- 「教育」を大学の初年次に限定した
- 「AIの影響」ではなく、レポート作成時の情報確認行動に絞った
- 実施できる方法と人数を示した
- 検証できない因果効果を対象外にした
- 候補だけでなく、必要資料と難点も出力させた
出力を安定させる3つのコツ
候補数を増やすより、評価と修正の工程を入れる方が使える問いに近づきます。
1. 「影響」をそのまま使わせない
「AがBに与える影響」は研究らしく見えますが、因果関係を検証するには比較対象、指標、データ、研究設計が必要です。それらを用意できない場合は、次の問い方へ変えます。
- どのように認識されているか
- どのような経験が報告されるか
- どのような傾向が見られるか
- 制度や文書ではどのように扱われているか
- 複数事例の共通点と相違点は何か
これは単なる言い換えではありません。手元の資料で答えられる範囲に、問いの強さを合わせる作業です。
2. 一度で確定せず、反証役を入れる
最初の出力から有力案を1つ選び、次のプロンプトで弱点を点検します。
次の研究テーマとリサーチクエスチョンを、厳しい研究計画レビュー担当者として点検してください。
# 対象案
{AIが出した研究テーマとリサーチクエスチョンを貼る}
# 点検項目
- 用語の曖昧さ
- 対象範囲の広さ
- 問いに埋め込まれた未確認の前提
- 調査方法との不一致
- 期間内に答えられない部分
- 倫理面・個人情報面の注意
- 文献検索で確認すべき点
出力は「問題点」「なぜ問題か」「修正案」の順にしてください。
最後に、修正版のリサーチクエスチョンを3案示してください。
不明な事実や先行研究は作らないでください。
3. 予備調査の結果を戻す
問いは、文献を読む前に完全確定するものではありません。George Mason Universityのガイドも、広いテーマを選んだ後に予備調査を行い、すでに議論されている論点を把握してから問いを評価する流れを示しています。
文献を数本確認したら、次の情報をAIに戻します。
- よく使われる用語と定義
- 既存研究で扱われている対象
- 主な研究方法
- 意見が分かれている点
- 入手できる資料と、入手できない資料
ただし、論文の内容を入力する際は引用箇所と自分の要約を区別し、著者名、年、ページなどの出典情報を残してください。文献レビューは資料ごとの要約を並べるだけではなく、研究上の問いに関係する材料を選び、複数の資料を結び付ける作業です。Writing a Literature Reviewも、その基本的な進め方を説明しています。
活用例:広い関心を調査可能な候補へ変える
たとえば、入力が次の内容だったとします。
- 関心:リモートワークと人材育成
- 現象:新入社員が非公式な相談をしにくい
- 対象:入社1年以内の社員
- 方法:公開資料の分析と少人数インタビュー
- 期間:3か月
この場合、AIには単一の答えを求めず、異なる調査の型を作らせます。
- 経験を尋ねる案:新入社員は、リモート勤務下で業務上の相談相手をどのように見つけているか
- 制度を調べる案:企業の公開資料では、リモート勤務中の新入社員支援がどのように説明されているか
- 比較する案:出社頻度の異なる新入社員の語りには、相談行動についてどのような共通点と相違点があるか
ここで大切なのは、見栄えの良い問いを選ぶことではありません。インタビュー協力者を確保できないなら、公開資料を使う案の方が実行しやすい可能性があります。一方、公開資料だけでは社員の経験を直接説明できません。問いと資料はセットで選ぶ必要があります。
AIの提案を採用する前のチェックリスト
最後に、出力された候補を次の順で確認してください。
- [ ] 問いを一文で読んだとき、対象と調べる内容が分かる
- [ ] Yes/Noや検索一回で終わる問いではない
- [ ] 期間、地域、対象者などの範囲が広すぎない
- [ ] 問いの中で、未確認の原因や問題を決めつけていない
- [ ] 利用できる資料や調査方法で答えられる
- [ ] 「効果」「影響」を測る指標と比較方法を説明できる
- [ ] 個人情報、同意、機密情報などの倫理面を確認した
- [ ] 文献検索によって、用語、先行研究、新規性を再確認した
- [ ] 指導教員や担当者に、実施可能性を相談した
最初に見るべき分岐点は、問いの新しさではなく、必要な資料へアクセスできるかどうかです。資料が取れなければ、対象を変える、問いの強さを下げる、公開情報で答えられる形へ組み直す。この判断まで行って、研究テーマは初めて計画として動き始めます。
