返信につながる採用スカウト文の作り方|候補者ごとに調整できるAIプロンプト
採用スカウト文をAIで作るなら、候補者を大げさに褒めるのではなく、公開情報のどこに注目し、募集ポジションとどう結び付くのかを具体的に書かせることが重要です。
この記事では、採用担当者や現場責任者が使える汎用LLM向けプロンプトを紹介します。狙う出力は、候補者ごとに調整された短いスカウト文です。
- 候補者の経歴と募集要件を結び付ける
- 根拠のない評価や過度な期待を避ける
- 件名、本文、確認事項をまとめて出力する
- 初回連絡で返答を迫らない
ここがポイント: AIに「魅力的な文章を書いて」と頼むだけでは不十分です。候補者の事実、募集ポジション、接点の根拠、禁止事項、出力形式まで渡します。
このプロンプトで作れるスカウト文
完成形は「注目した事実→仕事との接点→短い打診」の順です。 候補者のプロフィールを言い換えるだけの長文にはしません。
想定するのは、採用媒体やビジネスSNSなどで初めて連絡する場面です。たとえば、次の材料から一通の文面を作ります。
- 候補者の公開プロフィールにある職務経験や成果
- 募集ポジションの担当業務
- 候補者に任せたい具体的な役割
- 働き方、勤務地、報酬など開示できる条件
- 面談を打診する際の所要時間と返信方法
AIに渡す情報は、職務との関係が説明できる範囲に絞ります。厚生労働省は、公正な採用選考について「応募者に広く門戸を開くこと」と「適性・能力に基づいた採用基準」を基本に挙げています。AIを使う場合にも同じ考え方を守る必要があります。厚生労働省のQ&Aでも、AIを含む方法による選考でこの原則を遵守する必要があると明記されています。
したがって、家族構成、出生地、信条など、職務上の適性・能力と関係のない情報を入力したり、文面の判断材料にしたりしません。
コピペ用プロンプトテンプレート
次のテンプレートは、候補者の事実と募集内容を埋めればそのまま使えます。 ChatGPT、Claude、Geminiなど特定製品の機能に依存しない書き方です。
あなたは企業の採用担当者を支援する編集者です。
以下の情報だけを使い、候補者へ初めて送る採用スカウト文を作成してください。
# 目的
候補者の公開プロフィールで確認できる経験と、募集ポジションの具体的な接点を伝え、
{面談時間}分の情報交換を無理なく打診する。
# 候補者について確認できた事実
- 現在または直近の職種: {職種}
- 経験領域: {経験領域}
- 使用技術・業務スキル: {スキル}
- 公開プロフィールに記載された成果: {成果}
- 特に注目した事実: {注目点}
# 募集ポジション
- 会社名: {会社名}
- 職種名: {募集職種}
- 主な担当業務: {担当業務}
- 解決してほしい課題: {事業課題}
- 候補者の経験との接点: {接点}
- 入社後に期待する最初の役割: {最初の役割}
- 開示できる条件: {勤務地・働き方・報酬範囲など}
- 会社・チームの特徴: {事実として説明できる特徴}
- 連絡者の氏名と役割: {氏名・役職}
# 文面の条件
- 候補者への敬意が伝わる自然な日本語にする
- 冒頭で、どの事実に注目したかを具体的に示す
- 注目した事実と募集ポジションの接点を1つに絞る
- 「即戦力」「完璧な人材」など、根拠のない断定をしない
- 候補者の性格、価値観、転職意欲を推測しない
- 入力にない実績、制度、待遇、事業計画を補わない
- 過度に親しげな表現、煽り、返信の催促を避ける
- すぐに応募を求めず、まずは情報交換を提案する
- 本文は{文字数下限}〜{文字数上限}字を目安にする
- 入力情報が不足している箇所は創作せず、確認事項へ回す
# 出力形式
1. 件名案を3つ
2. スカウト本文
3. 文面に使用した候補者の事実
4. 送信前に人が確認すべき事項
# 最終確認
出力前に、次を確認してください。
- 候補者についての記述に、入力情報から裏付けられない評価がないか
- 募集内容や条件を誇張していないか
- 職務上の適性・能力と関係のない情報を使っていないか
- 候補者名や会社名などを取り違えていないか
問題があれば、本文を修正してから出力してください。
OpenAIの公式ガイドも、指示、文脈、例などを明確に与え、期待する出力を具体化する考え方を示しています。Prompt engineering guideで紹介されている基本を、採用スカウト文向けに落とし込んだのが上の構成です。
入力時に変える部分
品質を最も左右するのは、候補者との「接点」を具体的な一文にできるかどうかです。 項目をすべて埋めることより、根拠のある接点を一つ渡すことを優先します。
候補者情報は事実と解釈を分ける
{成果}には、公開プロフィールに書かれている事実を入れます。
- 良い入力: 「決済機能の開発で要件定義から運用まで担当」
- 避けたい入力: 「責任感が強く、どんな現場でも活躍できる」
前者はプロフィールで確認できます。後者は採用側の推測であり、文面に入れると定型的な褒め言葉になりやすい表現です。
接点は「同じ言葉」ではなく役割でつなぐ
{候補者の経験との接点}には、経験が自社のどの仕事で生きるのかを書きます。
候補者はBtoB SaaSの導入支援で業務設計を担当している。
当社では新規顧客向けの導入プロセスを標準化する役割を募集しているため、
現場ヒアリングから運用設計までの経験に接点がある。
「SaaS経験者を募集しているから」だけでは、候補者への連絡理由が弱いままです。どの業務を任せたいのかまでつなぐと、AIが具体的な本文を作りやすくなります。
条件は開示できる範囲で先に渡す
勤務地、リモート勤務の可否、報酬範囲、雇用形態など、候補者の判断に影響する条件は可能な範囲で入力します。未確定なら、AIに推測させず「未確定」「文面には記載しない」と指定してください。
NG例と改善例
失敗の原因は、AIへの依頼が短いことではなく、判断材料と禁止事項が欠けていることです。
NG例:魅力的に書くことだけを求める
以下の経歴を見て、優秀なエンジニアに響く魅力的なスカウト文を書いてください。
ぜひ当社に来てほしいという熱意も伝えてください。
経歴: {候補者の経歴}
求人: {求人情報}
この指示には、何に注目したのか、どの仕事との接点があるのか、何を推測してはいけないのかがありません。その結果、次のような文面になりがちです。
- 「素晴らしいご経歴を拝見しました」と抽象的に褒める
- 候補者の成果をそのまま並べる
- 「即戦力として活躍できる」と根拠なく断定する
- 会社の魅力を長く説明し、連絡理由が埋もれる
改善例:接点と初回連絡の目的を限定する
候補者が公開している「{具体的な経験}」に注目しています。
この経験が、当社の「{任せたい業務}」にどうつながるかを1文で説明してください。
その後、募集背景と最初に任せたい役割を簡潔に伝え、
{面談時間}分の情報交換を提案するスカウト文を作成してください。
候補者の性格、転職意欲、実績の大きさは推測しないでください。
本文は{文字数上限}字以内にしてください。
改善点は明確です。
- 注目した経験を一つに限定した
- 自社との接点を説明させた
- 初回の目的を「応募」ではなく「情報交換」にした
- 推測してはいけない内容を指定した
- 文字数の上限を設けた
出力を安定させる3つのコツ
文章を一度で完成させようとせず、根拠確認と本文作成を分けると誤りを見つけやすくなります。
1. 先に対応関係を確認する
本文を作る前に、AIへ次の3項目だけを出力させます。
本文を書く前に、次を箇条書きで示してください。
- 候補者について確認できる事実
- 募集ポジションとの接点
- 入力不足のため断定できないこと
ここで接点が弱ければ、候補者情報か求人情報を追加します。材料が足りないまま表現だけを整えても、個別性は高まりません。
2. 出力形式を固定する
件名と本文だけでなく、「使用した事実」「人の確認事項」も出力させます。採用担当者は、どの情報を根拠に文章が作られたのかを送信前に確認できます。
複数候補者を扱う場合も、最初から自動送信を前提にしないことが重要です。候補者名、勤務先、実績、募集職種、条件の取り違えは、人が一通ずつ確認します。
3. 禁止事項を具体的に書く
「差別的な表現を避ける」だけでは、何を除外すべきかが曖昧です。少なくとも次を明記します。
- 入力にない性格や能力を推測しない
- 転職意欲を決め付けない
- 年齢、性別、家族、出生地、信条などを評価材料にしない
- 求人票にない待遇や制度を補わない
- 候補者の実績を誇張しない
厚生労働省は、本人の適性・能力に関係しない事項を把握することが就職差別につながるおそれを指摘しています。公正な採用選考の基本を社内ルールと併せて確認し、AIの入力項目にも反映してください。
活用例:役割別に打診の焦点を変える
テンプレートは共通でも、候補者に伝える接点は職種ごとに変えます。 同じ褒め言葉を使い回すのではなく、任せたい仕事を変数として渡します。
エンジニアへの連絡
注目した事実: {技術領域で担当した工程や公開された成果}
接点: {自社で解決したい技術課題との関係}
最初の役割: {入社後に担当してほしい機能・改善領域}
技術名を並べるだけでなく、「設計」「移行」「運用改善」など、どの工程で経験が生きるのかを明記します。
営業職への連絡
注目した事実: {担当顧客・商材・営業プロセスについて確認できる経験}
接点: {自社の顧客層や販売課題との関係}
最初の役割: {開拓、提案設計、営業プロセス改善などの具体的な役割}
売上規模などが公開されていなければ、AIに数字を補わせません。担当領域や営業手法の接点に絞ります。
管理・企画職への連絡
注目した事実: {制度設計、業務改善、部門横断プロジェクトなどの経験}
接点: {自社で整備したい仕組みとの関係}
最初の役割: {現状整理、関係者調整、運用設計などの具体的な役割}
「調整力が高い」と人物像を推測するのではなく、どのプロジェクトで何を担当したかを根拠にします。
送信前チェックリスト
AIの出力は下書きです。候補者に送る責任は採用側にあります。 最後に、次の項目を人が確認してください。
- [ ] 候補者名、所属、職種を取り違えていない
- [ ] 注目した経験が公開情報で確認できる
- [ ] 経験と募集ポジションの接点を説明できている
- [ ] 性格、能力、転職意欲を推測していない
- [ ] 職務と関係のない個人情報を使っていない
- [ ] 求人条件や会社情報を誇張していない
- [ ] 応募や返信を強く迫る表現になっていない
- [ ] 面談時間と次の行動が明確になっている
- [ ] 自社の採用・個人情報管理ルールに適合している
まず改善すべきなのは、文章の華やかさではありません。候補者のどの事実を見て、どの仕事を任せたいのかを採用側が一文で説明できる状態です。その一文が曖昧なら、AIに本文を書かせる前に募集要件と候補者との接点を見直してください。
