RACIチャートをAIで作るプロンプト|責任者の重複と空欄を防ぐ実務テンプレート
プロジェクトの役割分担を整理したいものの、「担当者」と「最終責任者」が混ざってしまう。そんなときに使えるのが、業務一覧と関係者からRACIチャートを作るAIプロンプトです。
対象は、部門横断プロジェクトを進めるリーダーや、役割の曖昧さを会議前に洗い出したい担当者。表を埋めるだけでなく、責任者の重複、空欄、確認が必要な箇所まで検出するところをゴールにします。
この記事で分かることは次のとおりです。
- RACIの4区分と使い分け
- コピペできる汎用プロンプト
- 入力時に変更する項目
- AIが役割を勝手に決める失敗の防ぎ方
- CSVや会議用リストへ展開する方法
RACIチャートは「誰が作業し、誰が決めるか」を分ける表
RACIチャートの要点は、実作業を担う人と最終的に説明責任を持つ人を分けることです。
RACIは、関係者の関与を次の4種類で表します。Project Management Institute(PMI)は、RACIマトリクスを責任分担マトリクスの一種として定義しています。
- R:Responsible — 実際に作業を進める担当者
- A:Accountable — 完了や意思決定に最終責任を持つ人
- C:Consulted — 実行前や判断時に意見を求める相手
- I:Informed — 経過や結果を共有する相手
たとえば、Webサイト公開という一行だけでは粒度が粗すぎます。「原稿を承認する」「本番環境へ反映する」「公開を告知する」に分けると、作業担当と承認者を割り当てやすくなります。
ここがポイント: AIに人名を割り当てさせることより、判断材料が足りない箇所を「要確認」として残させることが重要です。
完成イメージ
次のように、業務を行、役割を列にした表を作ります。
| 業務・成果物 | 企画担当 | 制作担当 | 部門責任者 | 営業担当 |
|---|---|---|---|---|
| 掲載内容の作成 | C | R | A | I |
| 公開可否の承認 | C | I | A/R | I |
| 顧客への案内 | I | I | A | R |
これは形式の例です。実際の割り当ては、各組織の決裁権限や業務手順を確認して決めます。
コピペ用:RACIチャート作成プロンプト
次のテンプレートは、表の作成と問題点の検査を一度に依頼できる形です。 {} 内を自分の情報に置き換えて使ってください。
あなたはプロジェクト運営を支援する業務設計者です。
以下の情報を基に、RACIチャートのたたき台を作成してください。
【目的】
{このプロジェクトで実現すること}
【対象範囲】
{今回整理する工程や期間}
【業務・成果物】
- {業務1}
- {業務2}
- {業務3}
【関係者と権限】
- {役割名1}: {担当業務・決裁権限}
- {役割名2}: {担当業務・決裁権限}
- {役割名3}: {担当業務・決裁権限}
【RACIの定義】
- R: 実作業を担当する
- A: 完了・承認に最終責任を持つ
- C: 実行前または判断時に相談を受ける
- I: 経過または結果の共有を受ける
【作成ルール】
1. 業務・成果物を行、関係者を列にした表を作る
2. 原則として各行にAを1つ置く
3. Rは実作業に必要な人数だけ割り当てる
4. CとIを必要以上に増やさない
5. 入力情報だけでは決められない箇所は推測せず「要確認」とする
6. 業務の粒度が大きすぎる場合は分割案を示す
7. 同じ人にAとRが集中している場合は指摘する
8. Aがない行、Aが複数ある行、Rがない行を検出する
【出力形式】
1. RACIチャート
2. 要確認事項
3. 割り当て上の問題点
4. 修正候補
5. 関係者に確認する質問
各割り当てには、入力情報を根拠にした短い理由を付けてください。
このプロンプトの中心は、AIにもっともらしい表を作らせることではありません。「要確認事項」と「関係者に確認する質問」を出させ、合意形成に使える下書きへ変えることです。
入力時に変える項目と固定する条件
精度を左右するのは、肩書ではなく権限と具体的な業務を入力できるかどうかです。
必ず変更する項目
{このプロジェクトで実現すること}:完了と判断できる状態を書く{今回整理する工程や期間}:企画、制作、承認、公開などの範囲を限定する{業務1}:動詞と成果物を組み合わせる{役割名}:個人名より、まず役割名や部署名で整理する{担当業務・決裁権限}:何を実行でき、何を承認できるかを書く
「コンテンツ対応」のような曖昧な業務名は避けます。「原稿を作成する」「法務確認を依頼する」「公開を承認する」のように、完了条件が見える単位へ分けてください。
固定した方がよい条件
次の指示は、案件が変わっても残すと出力が安定します。
- 不明な割り当てを推測しない
- Aの欠落と重複を検出する
- Rがいない業務を指摘する
- CとIの過剰配置を確認する
- 判断理由と確認質問を出す
「各行のAは原則1つ」は責任の所在を明確にするための実務的なルールです。ただし、組織の決裁制度上どうしても共同承認が必要なら、AIに無理やり一人へ絞らせず、承認手順自体を注記します。
NG例と改善例
失敗の主因は、AIへの指示不足より、元の業務と権限が曖昧なことです。
NG例:役割を丸投げする
新商品の発売プロジェクトについて、企画、営業、制作、部長のRACIチャートを作ってください。
この依頼では、誰に承認権があるか、何を成果物とするかが分かりません。AIが一般的な組織像を補うと、見栄えは整っていても実態と異なる表になります。
改善例:業務、権限、不明点の扱いを指定する
新商品の発売準備について、次の3業務をRACIで整理してください。
業務:
- 商品紹介ページの原稿作成
- 表示内容の承認
- 既存顧客への案内
関係者:
- 企画担当: 商品情報を管理し、原稿を確認する
- 制作担当: ページを制作する。公開の承認権はない
- 部門責任者: 表示内容と公開可否を承認する
- 営業担当: 既存顧客へ案内する
各行のAは原則1つにしてください。
情報が足りない箇所は推測せず「要確認」と記載し、確認質問を出してください。
最後に、Aの重複・欠落、Rの欠落、CとIの過剰配置を検査してください。
改善した点は明確です。
- 抽象的な「発売」を3つの業務へ分解した
- 制作担当に承認権がないことを明記した
- AIが推測してよい範囲を制限した
- 表を作った後の検査条件を加えた
出力を安定させる3つのコツ
RACI表は、一度で完成させるより「作成・検査・合意」の3段階に分けると扱いやすくなります。
1. 表の前に業務一覧を点検させる
最初からRACI記号を埋めると、粒度の違う業務が同じ行に並びます。プロンプトへ次の一文を追加してください。
RACIチャートを作る前に、業務一覧の粒度を点検してください。
複数の成果物や承認を含む業務は分割し、分割理由を示してください。
2. 根拠の列を付ける
記号だけの表では、なぜその割り当てになったのか確認できません。表とは別に、「業務名・割り当て・根拠」の一覧を出させるとレビューしやすくなります。
根拠が入力情報に見当たらなければ、それ自体が不足情報です。AIの一般知識で埋めず、確認事項へ移します。
3. 機械的な検査を最後に実行させる
出力後に、次の条件を再確認させます。
- Aがない業務はないか
- Aが複数の業務はないか
- Rがいない業務はないか
- 一人へAまたはRが集中していないか
- Cが多すぎて意思決定が遅くならないか
- Iに必要な共有時点が定義されているか
RACIは記号を置いて終わりではありません。Asanaの解説でも、チャートを実際のワークフローへつなげて運用する観点が示されています。担当者が変わったときや工程が追加されたときに更新できる保存場所と責任者も決めておきましょう。
CSV出力や会議用リストへの応用
同じ入力情報から、用途に合わせて出力形式だけを切り替えられます。
表計算ソフトへ貼り付けるCSV
基本テンプレートの末尾へ追加します。
RACIチャートはCSV形式でも出力してください。
1行目は「業務・成果物,役割名1,役割名2,役割名3」とします。
値には R、A、C、I、A/R、要確認、空欄のみを使用してください。
CSVの後に、要確認事項を通常の箇条書きで出してください。
業務名にカンマが入る可能性がある場合は、全項目をダブルクォートで囲むよう追加指定します。
合意形成会議で使う確認リスト
RACIチャートの「要確認」を、会議で回答できる質問へ変換してください。
各質問に次の項目を付けてください。
- 対象業務
- 確認相手
- 決める内容
- 未決定のまま進めた場合の支障
- 回答期限
会議では全セルを読み上げる必要はありません。Aの欠落・重複、Rの不在、要確認の箇所に絞れば、決めるべき事項が明確になります。
既存表のレビュー
すでにRACIチャートがある場合は、新規作成ではなく監査用プロンプトに切り替えます。
以下のRACIチャートをレビューしてください。
記号を勝手に変更せず、問題候補と修正案を分けて出してください。
確認観点:
- Aの欠落または複数割り当て
- Rの欠落
- AとRの一人への過度な集中
- CとIの過剰配置
- 業務名の粒度の不一致
- 権限情報と割り当ての矛盾
[ここに既存のRACIチャートを貼り付ける]
実行前チェックリスト
最終判断はAIではなく、実際の権限を知る関係者が行います。 出力を共有する前に、次を確認してください。
- [ ] 業務名から完了状態を判断できる
- [ ] 関係者ごとの決裁権限を入力した
- [ ] 不明点を「要確認」として残した
- [ ] 各業務にRがいる
- [ ] 各業務のAが原則1つになっている
- [ ] CとIを慣習だけで増やしていない
- [ ] AIが付けた根拠を関係者が確認した
- [ ] 担当変更時の更新方法を決めた
まずは、進行が止まりやすい5〜10件の業務だけを入力してみてください。AIの出力で最初に見るべきなのは、完成した表の美しさではなく、Aが決まらない行と、権限情報が足りない行です。そこを会議で決められれば、RACIチャートは単なる一覧表ではなく、実際に仕事を前へ進める道具になります。
