候補を点数で比較するAIプロンプト|重み付け・根拠・感度分析まで行う意思決定マトリクス
複数のサービス、製品、施策を比較しても、最後は印象で選んでしまう。そんな場面で使えるのが、評価基準と重みを決めて候補を採点する意思決定マトリクスです。
この記事では、ChatGPT、Claude、Geminiなどの対話型AIで使える汎用テンプレートを紹介します。単に順位を出すのではなく、採点根拠、不足情報、重みを変えた場合の順位変動まで確認できる構成です。
この記事でできることは次のとおりです。
- 候補と評価基準を表にまとめる
- 各基準の重要度を重みとして反映する
- 根拠のない点数や数字の捏造を防ぐ
- 合計点だけでなく、弱点と判断条件を確認する
- 重みを変えて結論の安定性を調べる
ここがポイント: AIに「どれが一番?」とだけ聞くのではなく、評価基準、採点尺度、重み、情報不足時の扱いを先に固定します。
意思決定マトリクスは何に使えるか
意思決定マトリクスは、複数の候補を同じ基準で比較し、選んだ理由を説明できる形にするための道具です。
たとえば、次のような場面で使えます。
- 業務ツールやクラウドサービスの選定
- 外注先や仕入れ先の比較
- 複数の企画案から優先施策を決める
- PC、家電、通信プランなどの購入比較
- 転居先、会場、出店候補地の比較
- 学習方法や資格講座の選択
候補を横に並べるだけなら、一般的な比較表でも十分です。意思決定マトリクスの特徴は、基準ごとに重要度を設定する点にあります。
たとえば「価格は安いが、導入に時間がかかるサービス」と「価格は高いが、すぐ使えるサービス」を比べるとします。導入期限が迫っているなら、価格より導入期間の重みを大きくする必要があります。
つまり、マトリクスが示すのは絶対的な正解ではありません。誰が、何を重視して選ぶかを数字と文章で見えるようにした結果です。
コピペ用プロンプトテンプレート
次のテンプレートは、候補、評価基準、重み、採点材料がある程度そろっている場合に使えます。{}で囲んだ部分を自分の条件に置き換えてください。
あなたは、複数の候補を公平に比較する意思決定支援者です。
以下の情報を使い、重み付き意思決定マトリクスを作成してください。
# 目的
{何を決めたいか}
# 意思決定者
{誰が最終的に判断するか}
# 候補
- {候補A}
- {候補B}
- {候補C}
# 評価基準と重み
- {評価基準1}: {重み}%
- {評価基準2}: {重み}%
- {評価基準3}: {重み}%
- {評価基準4}: {重み}%
重みの合計は100%にしてください。
合計が100%でない場合は、計算を始めずに指摘してください。
# 採点尺度
各基準を1〜5点で評価してください。
1点: 要件をほとんど満たさない
2点: 要件を一部だけ満たす
3点: 最低限の要件を満たす
4点: 要件を十分に満たす
5点: 要件を高い水準で満たす
# 判断材料
{仕様、価格、期限、調査結果、利用条件などを貼り付ける}
# 制約
- 判断材料にない事実や数値を作らない
- 情報がない項目は推測で採点せず「情報不足」と記載する
- 主観を含む採点では、その理由を1文で説明する
- 情報不足の項目は合計点から除外せず、暫定点を出さない
- 各候補について、致命的な条件違反があれば点数とは別に明記する
- 加重得点は「点数 × 重み」で計算する
- 計算後に各行と合計を再確認する
# 出力形式
1. 前提条件と評価方法
2. 意思決定マトリクス
- 行: 候補
- 列: 各評価基準の点数、採点理由、加重合計
3. 情報不足の一覧
4. 候補ごとの強みと弱み
5. 暫定順位
6. 1位を選んでよい条件
7. 結論が変わる可能性のある条件
最後に、最重要の評価基準の重みを±10ポイント変えた感度分析を行い、順位が変わるか確認してください。重みを変更するときは、他の基準を比例配分し、合計を100%に保ってください。
このテンプレートの中心は、順位そのものではありません。採点理由と情報不足を同時に出させることで、「点数は高いが、重要な仕様が未確認」という状態を見逃しにくくします。
入力時に変える部分
結果を左右するのは、候補名よりも評価基準と重みです。 ここを曖昧にすると、整った表が出ても判断には使えません。
{目的}は決定事項まで書く
「ツールを比較する」では広すぎます。何を決めるのか、いつまでに決めるのかを具体化します。
- 曖昧: 営業ツールを比較したい
- 具体的: 10人の営業チームが来月から使う顧客管理ツールを1つ選びたい
利用人数や期限が入ると、費用、導入期間、運用負担などの評価基準を作りやすくなります。
{評価基準}は重複を避ける
「使いやすさ」と「操作性」のように、意味が重なる基準を両方入れると、同じ長所を二重に加点することになります。
評価基準は、候補を見分ける質問に置き換えて確認すると整理しやすくなります。
- 費用: 予算内で導入・継続できるか
- 機能適合: 必須業務を追加開発なしで処理できるか
- 導入期間: 希望日までに利用を開始できるか
- 運用負担: 担当者が無理なく設定・管理できるか
- サポート: 問題発生時に必要な支援を受けられるか
{重み}は優先順位を数字にする
重みは合計100%にします。すべてを同じ重みにすると、重要度を設定する意味が薄れます。
たとえば、短期間で導入する業務ツールなら、次のように差を付けられます。
- 機能適合: 30%
- 導入期間: 25%
- 費用: 20%
- 運用負担: 15%
- サポート: 10%
ただし、これは入力例です。予算超過が認められない案件では、費用を加点項目にするより「予算上限を超えた候補は対象外」という必須条件にした方が明確です。
{判断材料}には出典と時点を入れる
価格やサービス仕様は変わることがあります。資料を貼るときは、確認日や情報源も添えます。
候補A
- 初期費用: {金額}
- 月額費用: {金額}
- 必須機能: {対応状況}
- 導入期間: {日数または期間}
- 情報源: {公式ページ、見積書、社内検証結果など}
- 確認日: {YYYY-MM-DD}
社外秘情報や個人情報を入力する場合は、利用するAIサービスのデータ取扱方針と社内ルールを先に確認してください。
NG例と改善例
「おすすめを決めて」だけでは、AIが勝手に評価軸を補い、もっともらしい順位を作る余地が残ります。
NG例
候補A、候補B、候補Cの中から、一番おすすめを決めてください。
価格、機能、使いやすさを総合的に見て表にしてください。
この指示には、次の問題があります。
- 誰にとってのおすすめか分からない
- 3つの基準の重要度が決まっていない
- 採点尺度がない
- 情報不足を推測で埋める可能性がある
- 必須条件と加点条件が分かれていない
改善例
10人のチームが来月から使う業務ツールを1つ選びます。
候補A、候補B、候補Cを比較してください。
必須条件:
- 月額費用が{上限額}以下
- {必須機能}に対応
加点基準と重み:
- 操作習得のしやすさ: 30%
- 導入期間: 30%
- 月額費用: 25%
- 問い合わせ対応: 15%
各項目を1〜5点で評価し、点数、根拠、加重得点を表にしてください。
資料に記載がない項目は採点せず「情報不足」としてください。
必須条件を満たさない候補は、合計点にかかわらず対象外と明記してください。
最後に、導入期間の重みを10ポイント下げた場合に順位が変わるか確認してください。
改善点は、AIへの説明を長くしたことではありません。必須条件、重み、採点尺度、情報不足時の処理を決めたことです。
出力を安定させる5つのコツ
安定した比較結果を得るには、AIに計算させる前に判断ルールを固定します。
Googleの公式ガイドでも、明確で具体的な指示、入力・文脈・制約の提示、一貫した構造がプロンプト設計の基本として説明されています。Google AI for Developersのプロンプト設計戦略も、複雑な指示を整理するときの参考になります。
1. 必須条件と加点条件を分ける
法令対応、予算上限、納期など、満たさなければ採用できない条件は点数に混ぜません。最初に合否を判定します。
- 必須条件: 満たさなければ候補から除外
- 加点条件: 条件を満たした候補同士の優劣を決める
致命的な欠点を、ほかの高得点で相殺させないためです。
2. 点数の意味を定義する
「5点満点で評価」だけでは、3点と4点の境界が曖昧です。可能であれば、基準ごとに目安を作ります。
導入期間の採点基準
5点: 1週間以内
4点: 2週間以内
3点: 1か月以内
2点: 2か月以内
1点: 2か月を超える
価格や日数のように数値化できる項目では、段階を明示すると採点のぶれを減らせます。
3. 根拠を点数の隣に置く
点数だけの表では、後から妥当性を確認できません。「4点|必須機能をすべて標準搭載」のように、短い根拠を同じ欄か隣の欄に出します。
主観的な項目では、評価者によって点数が変わります。その場合は「誰の評価か」も残してください。
4. 計算結果を再確認させる
AIは文章生成だけでなく計算も行えますが、出力をそのまま確定値として扱うべきではありません。次の確認指示を追加します。
表を出力した後、各候補について次を再計算してください。
- 各項目の点数 × 重み
- 加重得点の合計
- 重みの合計が100%か
最初の計算と再計算が一致しない場合は、修正後の表だけを提示してください。
重要な選定では、最終結果を表計算ソフトでも検算します。
5. 感度分析で「僅差」を見抜く
1位と2位の差が小さい場合、重みを少し変えただけで順位が逆転することがあります。その結論は、確定的というより条件付きです。
感度分析では、次を確認します。
- 最重要基準の重みを±5〜10ポイント変える
- 情報不足だった項目に最低点・最高点を仮置きする
- 1位と2位が入れ替わる条件を特定する
順位が頻繁に変わるなら、すぐ決定するより、不足情報の収集や関係者との重みの再確認を優先します。
出力形式を使い分ける追加指定
読むだけなら表、再計算するならCSV、システム連携ならJSONが向いています。
WordPressや文書で読みたい場合
比較結果はMarkdownの表で出力してください。
各セルは長文にせず、採点理由は1文以内にしてください。
表の後に、候補ごとの注意点を箇条書きで補足してください。
表計算ソフトで再計算したい場合
最終結果をCSVでも出力してください。
列順は次のとおりに固定してください。
候補,基準,重み,点数,加重得点,根拠,情報源,確認状態
CSVはコードブロック内に置き、数値列には単位や%記号を含めないでください。
情報がないセルは空欄にせず「未確認」と記載してください。
別の処理へ渡したい場合
結果を次のJSON形式でも出力してください。
キー名は変更しないでください。
{
"decision_goal": "{目的}",
"candidates": [
{
"name": "{候補名}",
"eligible": true,
"scores": [
{
"criterion": "{評価基準}",
"weight": 0,
"score": 0,
"weighted_score": 0,
"reason": "{根拠}",
"status": "confirmed | missing"
}
],
"total": 0
}
]
}
JSONやCSVを指定するときは、列名やキー名だけでなく、空欄の扱い、数値の単位、並び順まで固定すると後工程で扱いやすくなります。
活用例:ツール選定を2段階で進める
実務では、一度のプロンプトで結論まで出すより、「基準の確認」と「採点」を分ける方が安全です。
第1段階:評価設計だけを依頼する
{選定目的}に合う意思決定マトリクスを作る前に、評価設計を確認したいです。
候補: {候補一覧}
意思決定者: {役職・チーム}
必須条件: {条件}
現在考えている評価基準: {基準一覧}
まだ候補を採点しないでください。
次の項目だけを出力してください。
1. 重複している評価基準
2. 不足している可能性が高い評価基準
3. 必須条件へ移すべき項目
4. 推奨する重みと、その理由
5. 採点に必要な追加情報
ここで関係者が評価基準と重みに合意します。
第2段階:確定した条件で採点する
最初に紹介したコピペ用テンプレートへ、確定した評価基準と収集済みの資料を入れます。これにより、AIが評価設計と候補選びを同時に進めてしまうのを防げます。
比較後は、次のように追加質問できます。
1位の候補を選ばない方がよい条件を3つ挙げてください。
各条件について、確認すべき資料、質問先、判断期限を整理してください。
判断材料にないリスクは「仮説」と明記してください。
この質問は、1位を正当化するためではなく、見落とした条件を探すためのものです。
使用前のチェックリスト
最後に、プロンプトを送信する前に次の項目を確認してください。
- [ ] 決めたいことと意思決定者を書いた
- [ ] 比較する候補を同じ粒度で並べた
- [ ] 必須条件と加点条件を分けた
- [ ] 評価基準の意味が重複していない
- [ ] 重みの合計が100%になっている
- [ ] 1〜5点など、採点尺度を定義した
- [ ] 判断材料に出典と確認日を付けた
- [ ] 情報不足を推測で埋めないよう指示した
- [ ] 採点理由と計算確認を出力項目に含めた
- [ ] 僅差の場合に感度分析を行う
AIが作った意思決定マトリクスは、判断を自動化するものではありません。次に見るべきなのは、1位の合計点よりも、順位を逆転させる未確認情報が残っていないかです。そこが分かった時点で、追加調査の対象と決定期限を具体的に決められます。
