外注先選びで「安さ」以外を見抜くAIプロンプト|根拠・未確認事項・契約前質問を整理するテンプレート
このプロンプトは、外注先やベンダーから届いた提案書、見積書、回答票を読み比べ、確認できた事実・不明点・契約前に聞くべき質問を整理するためのものです。
制作会社、開発会社、コンサルタント、業務委託先などを選ぶ担当者に向いています。AIに採用先を決めさせるのではなく、人が判断できる「評価メモ」を作ることが目的です。
- 提案書に書かれている根拠を抜き出す
- 書かれていない項目を勝手に補完させない
- 価格だけでなく、体制・納期・品質・セキュリティ・契約条件を確認する
- 最終結論ではなく、推奨候補と追加確認事項を出す
ここがポイント: AIには「優れた会社を選んで」と頼むのではなく、「資料から確認できる事実と、確認できない事項を分離して」と指示します。
このプロンプトで作るのは、点数表ではなく評価の根拠
外注先評価で重要なのは、順位そのものより、その順位を支える根拠です。
総合点だけを出すと、情報量の多い提案書が高く評価されたり、AIが一般論で空欄を補ったりする恐れがあります。そこで、候補ごとに次の4つを分けて出力させます。
- 資料で確認できた事実
- 評価できる点と懸念点
- 資料だけでは判断できない事項
- 契約前に確認する質問
たとえば「サポート体制が充実している」という文章だけでは、対応時間、連絡手段、一次回答までの時間、休日対応の有無は分かりません。この場合、AIに高評価を付けさせるのではなく、確認質問へ変換させます。
NISTのサプライヤー向けデューデリジェンス資料でも、契約前に関連情報を調査し、情報に基づいて判断する考え方が示されています。ICTベンダーでは、基礎的なセキュリティ対策だけでなく、供給元、事業継続性、再委託を含むサプライチェーンも確認対象になります。NIST SP 1326
コピペ用:外注先・ベンダー評価プロンプト
次のテンプレートは、複数候補の提案書を比較し、選定会議に使える評価メモを作る形です。資料に個人情報、秘密情報、未公開価格が含まれる場合は、利用するAIサービスへの入力可否を社内規程や契約で先に確認してください。
あなたは、外注先・ベンダー選定を補助する調達アナリストです。
以下の候補資料を読み、選定担当者が契約前の確認を行える評価メモを作成してください。
# 選定の目的
{委託したい業務と達成したい状態}
# 必須条件
- {必須条件1}
- {必須条件2}
- {必須条件3}
# 重視する観点
- 業務理解と提案の具体性
- 実施体制と担当範囲
- 納期、工程、遅延時の対応
- 品質管理と検収方法
- 価格、追加費用、支払条件
- セキュリティと情報管理
- 再委託の有無と管理方法
- 契約終了時のデータ返却・削除・引き継ぎ
- {案件固有の観点}
# 候補資料
## 候補A
{提案書・見積書・回答内容}
## 候補B
{提案書・見積書・回答内容}
## 候補C
{必要な場合のみ追加}
# 評価ルール
1. 候補資料に書かれていない事実を推測しない。
2. 各判断には、根拠となる記述を短く要約して添える。
3. 根拠を特定できない項目は「資料上は未確認」と明記する。
4. 「実績豊富」「柔軟に対応」など、条件や数値がない表現は、そのまま高評価にしない。
5. 必須条件を満たさない候補と、充足を確認できない候補を分ける。
6. 価格は総額だけでなく、前提、対象範囲、追加費用の条件も比較する。
7. AIが契約可否を確定せず、人が確認すべき事項を残す。
8. 資料間に矛盾があれば、該当箇所と内容を示す。
# 出力形式
次の順番で、日本語のMarkdownとして出力してください。
## 1. 暫定結論
- 推奨候補
- 推奨理由(3点以内)
- この段階で確定できない理由
## 2. 候補別評価
候補ごとに以下を記載する。
- 確認できた事実
- 評価できる点
- 懸念点
- 資料上は未確認の事項
- 根拠となった記述の要約
## 3. 必須条件の確認
各条件を「充足」「不充足」「未確認」のいずれかで示す。
## 4. 契約前の確認質問
質問ごとに、次を付ける。
- 質問先の候補
- 質問文
- 確認する理由
- 回答によって判断がどう変わるか
## 5. 選定時の注意点
- 候補間で比較条件がそろっていない項目
- 契約書や専門担当者による確認が必要な項目
- 最終判断者が決めるべきトレードオフ
# 最終確認
出力後に、次を自己点検してください。
- 資料にない実績、資格、人数、価格、納期を作っていないか
- 「不充足」と「未確認」を混同していないか
- 推奨理由に資料上の根拠があるか
- 契約前質問がYes/Noだけで終わらず、条件を具体化できる内容か
入力時に変える部分
精度を左右するのは、候補資料の長さよりも、案件固有の必須条件が明文化されているかです。
{選定の目的}
単に「Webサイト制作を外注する」ではなく、納品後の状態まで書きます。
既存の企業サイトを刷新し、社内担当者がCMSでニュースと導入事例を更新できる状態にする。
公開希望日は2026年11月30日。
目的が具体的なら、デザイン案の魅力だけでなく、CMS操作、移行、教育、公開日までの工程も評価対象にできます。
{必須条件}
希望条件ではなく、満たさなければ契約できない条件を入れます。
- 2026年11月30日までに本番公開できる
- 現行サイトの記事200件を移行対象に含む
- 個人情報を扱う問い合わせフォームの安全対策を説明できる
- 再委託する業務と委託先の管理方法を開示する
「必須」と「できれば欲しい」を混ぜると、AIの推奨理由がぶれます。希望条件は別にして、トレードオフとして扱わせるのが安全です。
{候補資料}
候補ごとに同じ種類の資料を入力します。最低限、次をそろえると比較しやすくなります。
- 提案範囲と対象外作業
- 見積金額と内訳
- スケジュール
- 担当者と実施体制
- 品質管理・検収方法
- 保守や障害対応の条件
- セキュリティ回答
- 再委託の有無
- 解約・移行時の条件
資料がそろっていない場合、その差自体が重要な結果です。無理に同じ表へ埋めず、「候補Bは保守条件が未提出」のように出力させます。
NG例:AIに「一番よい会社」を決めさせる
NGプロンプト
この3社を比較して、一番よい外注先を選んでください。
これでは、何をもって「よい」とするのかが不明です。AIは文章量、表現の分かりやすさ、一般的な評価軸などを使って結論を作ろうとします。
特に起きやすい問題は次のとおりです。
- 安価な候補を自動的に有利とみなす
- 提案書にないサポート内容を一般論で補う
- 未確認事項を低評価と同じように扱う
- 提案範囲が違う見積総額をそのまま比較する
- 推奨理由が「総合的に優れている」で終わる
改善例
候補を即決せず、資料で確認できた事実、未確認事項、必須条件への適合を分けてください。
見積金額は、対象範囲、追加費用の発生条件、保守費用をそろえて比較してください。
暫定的な推奨候補を示す場合は、根拠となる資料の記述と、結論を覆し得る未確認事項を併記してください。
改善点は、AIの役割を「決定者」から「証拠整理と質問作成の補助者」に変えたことです。これにより、見栄えのよい提案書と、契約後の実行可能性を切り分けやすくなります。
出力を安定させる3つの指定
AIの評価を安定させるには、点数を細かくするより、判定ルールを明確にします。
1. 「未確認」を独立した状態にする
資料に記載がないことは、不合格を意味しません。一方、満たしているとも判断できません。
必須条件の状態は次の3つに限定します。
- 充足:資料に条件を満たす明確な根拠がある
- 不充足:条件を満たさない記述がある
- 未確認:判断に必要な情報がない、または曖昧
この区分があると、「書いていない会社」と「対応できない会社」を混同せずに済みます。
2. 価格の前提をそろえる
100万円と120万円の見積もりでも、前者にデータ移行や公開後の修正が含まれていなければ、単純比較はできません。
価格については、次を分解させます。
- 初期費用
- 継続費用
- 作業範囲
- 対象外作業
- 数量や工数の前提
- 追加費用が発生する条件
- 解約・移行時の費用
金額を比較する前に、何を買う金額なのかをそろえる。この順番が重要です。
3. 推奨を覆す条件まで書かせる
暫定推奨だけでは、追加回答が届いた後に再評価しにくくなります。次の一文を追加してください。
現在の推奨候補について、どの未確認事項がどのような回答だった場合に、推奨が変わるかを示してください。
これにより、選定会議で議論すべき分岐点が見えます。たとえば「候補Aが再委託先を開示できない場合は候補Bを再検討する」といった形です。
セキュリティを含む外注では質問を追加する
システム、クラウドサービス、顧客データを扱う外注では、機能と価格だけでは不十分です。NISTのサイバーセキュリティ・サプライチェーン管理ガイドは、製品・サービスの取得から運用、保守までを通じたリスクの識別、評価、対応を扱っています。NIST SP 800-161 Rev.1 Update 1
案件に合わせて、次の質問をテンプレートへ加えます。
- 外注先がアクセスするデータとシステムは何か
- アカウント発行、権限変更、退職時の削除をどう管理するか
- インシデント発生時、何時間以内に誰へ連絡するか
- データの保存場所、バックアップ、削除方法は何か
- 再委託先はどの業務を担当し、誰が監督するか
- 契約終了時にデータ、設定、成果物をどの形式で返却するか
- 脆弱性や障害が見つかった後、修正責任を誰が負うか
ただし、AIの出力は法務・セキュリティ審査の代わりにはなりません。契約条項、個人情報、知的財産、規制対応は、社内の担当者や専門家が原資料を確認する必要があります。
活用例:提案書を「契約前質問票」に変える
候補比較が終わったら、同じ資料から質問票を作れます。全候補に共通の質問と、特定候補だけに必要な質問を分けるのがコツです。
先ほどの評価メモを基に、契約前質問票を作成してください。
# 分類
1. 全候補への共通質問
2. 候補ごとの個別質問
# 各質問に含める項目
- 質問文
- 回答形式(自由記述/数値/選択式/資料添付)
- 回答期限
- 質問の理由
- 合格条件または判断基準
- 回答が不十分な場合の再質問
質問は「対応できますか」だけで終わらせず、担当者、期限、対象範囲、費用、例外条件を確認できる文章にしてください。
たとえば「障害時に対応できますか」ではなく、次のように具体化します。
重大障害の受付時間、一次回答までの目標時間、復旧対応の担当者、時間外対応の追加費用を記載してください。標準サービスと追加契約が必要な範囲を分けてください。
回答の比較が容易になるだけでなく、契約書や発注書へ反映すべき条件も見つけやすくなります。
実行前チェックリスト
プロンプトを送信する前に、次を確認してください。
- [ ] 委託の目的を、納品後の状態まで書いた
- [ ] 必須条件と希望条件を分けた
- [ ] 各候補へ同程度の資料を用意した
- [ ] 見積もりの対象範囲と対象外を入力した
- [ ] 「充足・不充足・未確認」を区別するよう指定した
- [ ] 資料にない内容を推測しないよう指定した
- [ ] 推奨を覆し得る条件も出力対象にした
- [ ] 機密情報をAIへ入力できるか確認した
- [ ] 法務・セキュリティ・現場担当者による原資料の確認を予定した
外注先評価の次の分岐点は、AIが付けた順位ではありません。未確認事項に対して各社がどれだけ具体的な回答を返し、その内容を契約条件へ落とし込めるかです。最終選定の前に、質問への回答、見積範囲、契約書の3つが一致しているかを確認してください。
