ブランドらしい文章をAIで作るには?トーン&マナー設計プロンプト完全版
このプロンプトは、Webサイト、メール、SNSなどで使う文章の「ブランドらしさ」を、AIが再利用できる具体的なルールに変換するためのものです。広報やマーケティングの担当者はもちろん、言葉の設計を初めて任された人にも使えます。
結論から言えば、「親しみやすく、信頼感のある文章にして」と頼むだけでは不十分です。誰に、どんな距離感で、どの言葉を使い、何を避けるかまで定義すると、担当者や媒体が変わっても表現をそろえやすくなります。
この記事では、最終成果物を「ブランドボイスガイドのJSON」として出力させます。JSONは項目の抜けを確認しやすく、別のプロンプトにもそのまま組み込みやすい形式です。
- 用途:ブランドの文章ルールを作る
- 対象:広報、マーケティング、SNS、ブログ、顧客対応の担当者
- 入力:ブランド概要、読者、価値観、既存文例、避けたい表現
- 出力:トーン、語彙、文体、禁止事項、媒体別ルールを含むJSON
何を作るプロンプトなのか
作るべきものは、雰囲気を表す形容詞の一覧ではなく、書き手が判断に使える文章ルールです。
たとえば「温かい」という方針だけでは、書き手によって結果が変わります。「読者の不安を先に言葉にする」「命令形ではなく選択肢を示す」「感嘆符は原則1投稿につき1個まで」と決めれば、実際の原稿で確認できます。
完成するガイドには、次の情報を含めます。
- ブランドが読者に約束すること
- 読者との関係性と適切な距離感
- 基本となるトーンの軸
- 推奨する語彙、文末、文章の長さ
- 避ける表現と、その代わりに使う表現
- Webサイト、メール、SNSでの調整方法
- 公開前に確認するチェック項目
ここがポイント: AIに「ブランドらしく書かせる」前に、人間が確認できる形で「ブランドらしさ」を定義します。
コピペ用:トーン&マナー設計プロンプト
以下のテンプレートをコピーし、{}で囲まれた部分を自社や企画の情報に置き換えてください。分からない項目は空欄にせず「未定」と入力します。
あなたは、ブランド戦略と言語設計を担当する編集者です。
以下の情報を基に、複数の担当者と文章生成AIが共通して使える「ブランドボイスガイド」を作成してください。
# 目的
Webサイト、メール、SNS、ブログ、顧客対応で、発信者が変わっても一貫した印象を保てる文章ルールを定義する。
# ブランド情報
- ブランド名:{ブランド名}
- 商品・サービス:{提供している商品やサービス}
- 主な対象読者:{年齢、職種、知識、置かれている状況}
- 読者が抱える課題:{解決したい悩みや不便}
- ブランドが提供する価値:{読者に約束する変化}
- 大切にする価値観:{3〜5項目}
- 競合や類似サービスとの違い:{具体的な違い}
- 読者に持ってほしい印象:{例:相談しやすい、堅実、先進的}
- 持ってほしくない印象:{例:上から目線、軽薄、過度に専門的}
# 参考資料
## ブランドらしい既存文例
{実際に公開済みの文章を2〜5件貼る。ない場合は「なし」と書く}
## ブランドらしくない文例
{避けたい文章と、その理由を書く。ない場合は「なし」と書く}
# 作成ルール
1. 「親しみやすい」「信頼感がある」などの抽象語だけで終わらせず、語彙、文末、文の長さ、読者への呼びかけ方に変換する。
2. 推奨ルールには短いOK例を付ける。
3. 禁止・注意ルールにはNG例と改善例を付ける。
4. ブランド情報から判断できない内容は創作せず、「要確認」とする。
5. Webサイト、メール、SNSの媒体差を示す。ただし基本人格は変えない。
6. 出力前に、各ルールが第三者でも判定できる具体性を持つか確認する。
# 出力形式
次のキーを持つ有効なJSONだけを出力する。JSONの前後に説明文を付けない。
{
"brand_summary": {
"audience": "",
"promise": "",
"relationship": ""
},
"voice_principles": [
{
"name": "",
"definition": "",
"writing_rule": "",
"ok_example": ""
}
],
"style_rules": {
"vocabulary": [],
"sentence_endings": [],
"sentence_length": "",
"reader_address": "",
"punctuation": ""
},
"avoid": [
{
"rule": "",
"reason": "",
"ng_example": "",
"improved_example": ""
}
],
"channel_adjustments": {
"website": [],
"email": [],
"social_media": []
},
"review_checklist": [],
"questions_to_confirm": []
}
このテンプレートは特定サービス専用ではありません。2026年7月26日時点で、ChatGPT、Claude、Geminiを含む、自然文とJSON出力を扱える生成AIで試せる汎用形にしています。ただし、利用するモデルや設定によって表現やJSONの厳密さは変わるため、公開前の人による確認は必要です。
入力時に変える部分
出力を最も左右するのは、形容詞ではなく読者と実例です。 とくに「対象読者」「ブランドらしい既存文例」「持ってほしくない印象」は具体的に入力してください。
必ず埋めたい5項目
{商品・サービス}:何を提供し、何を提供しないか{主な対象読者}:属性だけでなく、知識量や利用場面{ブランドが提供する価値}:利用後に何が変わるか{持ってほしい印象}:3語程度に絞る{持ってほしくない印象}:避けたい方向を明示する
「30代女性」のような属性だけでは、言葉の選択まで決まりません。次のように、読者が文章を読む場面まで加えます。
主な対象読者:初めて法人向け会計ソフトを導入する小規模事業者。
経理の専門知識は多くなく、月末作業の負担を減らしたい。
比較検討中にWebサイトを読み、専門用語が続くと判断を保留しやすい。
固定した方がよい条件
毎回変えるとブランドの人格が揺れるため、次の項目は社内で合意した後に固定します。
- 読者との関係性
- 基本となる3〜5個のボイス原則
- 推奨語と禁止語
- 敬語や文末の基準
- 誇張、断定、専門用語に関する方針
一方、文章の長さ、絵文字の有無、呼びかけの強さは媒体に合わせて調整できます。SNSだから別人格にするのではなく、同じ人物が場所に応じて話し方を少し変えるイメージです。
NG例と改善例
失敗しやすいのは、AIに解釈を任せる範囲が広すぎる指示です。
NG例:抽象語だけを渡す
当社のブランドに合う、親しみやすく信頼感のあるトーン&マナーを作ってください。
この指示には、ブランドの事業、読者、価値観、避けたい印象、出力形式がありません。「親しみやすい」の解釈も、くだけた口調、短文、絵文字など複数に分かれます。
改善例:判断条件を渡す
小規模事業者向けの会計支援サービスについて、ブランドボイスガイドを作成してください。
対象読者は、経理の専門知識が少なく、導入に不安を感じている事業者です。
「専門的だが相談しやすい」「手順が明確」という印象を目指します。
一方で、軽すぎる口調、根拠のない断定、利用者を急かす表現は避けます。
推奨語、禁止表現、OK例、NG例、Webサイト・メール・SNSでの調整方法をJSONで出力してください。
判断できない項目は「要確認」としてください。
改善点は、「信頼感」を次のような確認可能な条件へ分解したことです。
- 読者が誰か
- どの不安に応えるか
- どんな印象を作るか
- 何をするとブランドから外れるか
- どの形式で納品するか
出力を安定させる3つのコツ
目的、資料、出力形式を分けて書くと、修正箇所を特定しやすくなります。 Googleの公式ガイドも、明確で具体的な指示、区切りを使った一貫した構造、複雑な作業の分割を案内しています。
1. 実例を先に集める
AIにゼロからブランド人格を考えさせると、一般的な表現に寄りやすくなります。まず、既存の文章から次の資料を集めます。
- ブランドらしい文章:2〜5件
- 違和感のある文章:2〜5件
- 顧客に繰り返し説明している内容
- 法務・品質上、避ける必要がある表現
実例には「なぜ良いか」「なぜ違うか」も添えてください。文章そのものより、判断理由がルール作成に役立ちます。
2. 一度に完成原稿まで作らせない
最初のプロンプトではボイスガイドだけを作ります。人が内容を確認した後、別のプロンプトで原稿へ適用してください。
- ブランド情報と実例を整理する
- ボイスガイドをJSONで作る
- 広報、営業、顧客対応などの担当者が確認する
- 修正版を確定する
- 確定したガイドを使って原稿を作る
- 公開前チェックリストで点検する
この分割により、原稿に違和感が出たとき、「ブランド定義」と「個別原稿」のどちらを直すべきか判断できます。
3. 禁止だけでなく代替表現を示す
「専門用語を使わない」だけでは、必要な説明まで削られることがあります。禁止事項には、代わりにどう書くかをセットにします。
- NG:「最適化します」だけで済ませる
- 改善:「入力作業を減らし、月末の確認手順を短くします」と結果を書く
- NG:「今すぐ導入すべきです」と急かす
- 改善:「現在の作業時間と導入費用を比べて判断できます」と選択材料を示す
明確な指示と必要な背景を与える考え方は、Anthropicの公式プロンプトガイドでも推奨されています。モデルが察することを期待せず、望む行動を言語化するのが基本です。
確定したガイドを原稿へ適用するプロンプト
ボイスガイドは、原稿作成時に入力して初めて実務で機能します。 次のプロンプトは、確定済みJSONをメールやSNS文へ適用するためのものです。
あなたは{ブランド名}の編集担当者です。
以下のブランドボイスガイドを厳守し、指定された原稿を作成してください。
# ブランドボイスガイド
{確定済みのJSONを貼る}
# 作成する原稿
- 用途:{Webサイト/メール/SNS/ブログ/顧客対応}
- 目的:{読者に理解・判断・行動してほしいこと}
- 対象読者:{今回の読者}
- 伝える事実:{確認済みの情報}
- 含める言葉:{必須語句}
- 避ける内容:{禁止事項}
- 文字数:{目安}
# 出力
1. 完成原稿
2. 適用したボイス原則を3項目以内
3. 判断に必要だが不足している情報
事実として与えられていない内容は補わないでください。
ブランドボイスガイドと今回の指示が矛盾する場合は、原稿を作らず矛盾点を示してください。
媒体別の追加指定例
メールでは、読者が次の行動を迷わないようにします。
件名は30文字以内を目安にする。
本文の冒頭2文以内で用件を示す。
依頼事項、期限、問い合わせ先を分けて書く。
SNSでは、短さを優先しても誇張表現を増やさないよう指定します。
最初の1文で読者に関係する変化を示す。
未確認の効果や最大級表現を加えない。
絵文字とハッシュタグはブランドボイスガイドの範囲内にする。
Webサイトでは、見出しだけを読んでも要点がつかめる構造にします。
見出しは抽象的なスローガンだけにせず、提供価値を含める。
専門用語を使う場合は、直後に日常語で説明する。
段落はスマートフォンで読みやすい長さに分ける。
モデルが変わっても残すべきもの
サービスごとの小技より、入力情報と評価基準を保存する方が長く使えます。
ChatGPT、Claude、Geminiなどでは、同じ指示でも語彙や構成が完全には一致しません。さらに、各サービスのモデルや機能は更新されます。そのため、特定モデルの出力を正解として固定するのではなく、次を共通資産として管理します。
- 確定したブランドボイスガイド
- 採用済みのOK例
- 採用しなかったNG例と理由
- 媒体別の公開前チェックリスト
- 変更日、変更理由、承認者
モデルを変更したときは、同じ3〜5件の課題を入力し、禁止表現、媒体差、JSONの項目欠落を確認します。文章の好みだけでなく、ルールを守れたかで比較するのが重要です。
公開前チェックリスト
最後に、人が原稿を確認します。すべてに「はい」と答えられない場合は、原稿かボイスガイドを修正してください。
- [ ] 想定読者が具体的に定義されている
- [ ] 冒頭で読者に関係する要点を示している
- [ ] 推奨語と禁止語を守っている
- [ ] 抽象的な美辞麗句を、具体的な行動や結果に置き換えている
- [ ] 媒体に合わせても基本人格が変わっていない
- [ ] AIが入力にない商品情報や効果を追加していない
- [ ] 読者を見下す表現や不必要に急かす表現がない
- [ ] 次の行動がある場合、その内容と条件が明確になっている
- [ ] ブランドから外れる理由を担当者が説明できる
最初から完璧なガイドを目指す必要はありません。まず実際の文章3件に適用し、担当者間で判断が割れた箇所を記録してください。次に直すべきなのは、AIへの形容詞ではなく、人によって解釈が分かれたルールです。
